- ストレスチェック受検率の全国平均と目標値の目安
- 受検を強制できない法的理由と正しい勧奨方法
- 受検率を上げる5つの実務的取り組み(事例付き)
- 低受検率事業場が抱える3つの構造的原因と対処法
ストレスチェック受検率の全国平均はどのくらいか
令和5年度のストレスチェック受検率(検査実施率)は全国平均79.2%です。静岡労働局の集計(令和5年度)によると静岡県は80.9%で全国平均を上回っています(厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」)。
受検率が90%以上の事業場は全体の61.4%にとどまります。言い換えると、約4割の事業場では10人に1人以上が受検していないことになります。
受検率の目標値はどう設定するか
推奨される目標は90%以上です。厚生労働省は受検率80〜90%前後を「一般的な水準」としつつ、高ストレス者を早期発見するためには90%以上が望ましいとしています(厚労省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」令和4年3月)。
目標設定の考え方は以下のとおりです。
| 目標受検率 | 評価 |
|---|---|
| 90%以上 | 推奨。集団分析の信頼性が高まる |
| 80〜89% | 全国平均水準。さらなる改善が望ましい |
| 79%以下 | 全国平均を下回る。優先的に対策が必要 |
衛生委員会で前年度の受検率を報告し、毎年5ポイント改善などの数値目標を設定するのが実務的なアプローチです。
なぜ受検率が上がらないのか—3つの構造的原因
原因1:「会社に結果が見られる」という誤解
労働安全衛生法第66条の10第2項により、ストレスチェックの結果は労働者の同意なしに事業者に提供することが禁止されています。にもかかわらず「上司に知られる」「人事評価に影響する」という誤解が受検を妨げるケースが多いです。
原因2:受検の意義が伝わっていない
「義務だから受けろ」という一方的な通知では、受検の目的が伝わりません。個人のメンタルヘルス管理に役立つというメリットを具体的に伝えることが重要です。
原因3:受検の手続きが煩雑
紙の調査票を配布・回収する方式では回収率が低下しやすいです。スマートフォンやPCで受検できるWeb方式への移行で受検率が改善した事例が多く報告されています。
受検率を上げる5つの実務的取り組み
取り組み1:匿名性と不利益取扱い禁止を丁寧に説明する
実施前に「受検結果は本人の同意なしに会社へ提供されない」「受検しないことを理由に不利益な扱いは行わない」の2点を必ず明示します。労働者には受検義務はなく、受検しないことを理由とした不利益取扱いは労働安全衛生法第66条の10第9項で禁止されています。この法的保護を周知することが、受検への不安を取り除く最も効果的な方法です。
取り組み2:衛生委員会で受検勧奨ルールを定める
受検期間中に管理職から声をかけることは合法的な「勧奨」として認められています。衛生委員会でルールを整備し、「管理職から部下への一声かけ」を仕組み化することで、受検率が5〜10ポイント改善する事例があります。
ただし、強制や圧迫的な勧奨は「強制」とみなされる場合があり、法の趣旨に反します。「受検しませんか」という提案にとどめることが重要です。
取り組み3:定期健診と同時実施する
定期健康診断と同じタイミングでストレスチェックを実施すると、受検率が毎年90%超となる事例が報告されています。「健診のついで」という心理的ハードルの低さが有効に働きます。実施者(産業医・保健師等)と日程を事前調整することで、実施コストの削減にもなります。
取り組み4:Web受検に切り替える
紙調査票からWeb方式に移行すると、回収手続きの手間がなくなり受検率が向上するケースが多いです。外部委託サービスのWebシステムを活用することで、実施事務担当者の作業量削減と受検率向上の両立が図れます。スマートフォン対応のサービスを選ぶことが特に有効です。
取り組み5:リマインド通知を複数回送る
実施期間中(通常1か月程度)に、1週間前・3日前・最終日など複数回のリマインドを送ります。メール・チャットツール・掲示板など複数チャネルを活用することで見落としを防ぎます。リマインドの回数が多いほど受検率が上がる傾向があることが報告されています。
受検率を衛生委員会でどう報告するか
衛生委員会では毎回または年1回、以下の項目を報告します。
- 実施対象者数・受検者数・受検率
- 前年度比較と全国平均との比較
- 未受検者の把握状況(個人特定しない形で)
- 翌年度の受検率目標値
受検率が80%を下回る場合は、原因分析と改善策の審議を行います。「誰が受検していないか」を人事権者が把握することは禁止されていません(受検率の把握と個人の結果の把握は別)が、把握した情報を人事目的で使用することは不利益取扱い禁止の観点から避けるべきです。
まとめ
ストレスチェック受検率の全国平均は令和5年度時点で79.2%、目標は90%以上です。受検は労働者に義務がなく、強制は法律で禁止されているため、匿名性の説明・衛生委員会での勧奨ルール整備・Web受検への移行・リマインド通知の仕組み化によって受検率を引き上げることが実務的なアプローチです。
ストレスチェックの実施体制全体の見直しやシステム選定については、ストレスチェックシステムの選び方もあわせてご参照ください。
この記事をシェア
ストレスチェック実施体制の整備についてご相談ください
受検率向上の仕組み作りから、ストレスチェックシステムの選定・導入まで、FUNBREWが一貫してサポートします。