この記事のポイント
- ストレスチェックと定期健康診断は「同じタイミングで、別制度として実施」するのが実務の基本
- 結果は制度ごとに完全分離。健診担当者にストレスチェック結果を渡してはならない
- スケジュール統合で従業員の受検負担を減らせるが、同意書・実施者・管理システムは別々に用意する
ストレスチェックと定期健康診断は「同時期実施」が可能か?
多くの企業から「定期健康診断の時期に合わせてストレスチェックを実施したい」という声があります。結論から言えば、同じ時期に実施することは可能です。ただし「同時実施」とは「同じタイミングで、別制度として運用する」ことを意味します。
ストレスチェックは労働安全衛生法第66条の10、定期健康診断は同法第66条にそれぞれ根拠を持つ別々の制度です。法律上の目的・実施義務・結果の取り扱いがすべて異なるため、「一緒に1つのフォームで済ませる」ことはできません。
| 項目 | ストレスチェック | 定期健康診断 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 労安衛法第66条の10 | 労安衛法第66条 |
| 義務対象 | 常時50人以上(2028年度より全事業場方針) | すべての事業場・規模問わず |
| 結果の会社への開示 | 本人の同意がない限り不可 | 事業者に報告義務あり |
| 実施者 | 医師・保健師・歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 | 医師(一部検査は省略可) |
| 行政報告 | 50人以上は労基署へ報告(e-Gov電子申請・2025年1月義務化) | 定期健康診断結果報告書(e-Gov電子申請・2025年1月義務化) |
同じ時期に実施する3つのメリット
1. 従業員の受検負担を集約できる
健康診断の会場に来た機会に、同日または同じ時期にストレスチェックの案内を出すことで、従業員は「健康管理の時期」として一括して認識しやすくなります。受検率の向上にもつながります。
2. 人事・総務の管理工数が減る
スケジュール調整・案内メール・督促フローを1つのサイクルでまとめることで、担当者の管理コストを削減できます。
3. 集団分析と健診データの活用
ストレスチェックの集団分析結果と、定期健康診断の有所見率を同じ時期に集めることで、衛生委員会での産業保健施策の立案に活用しやすくなります(ただし、個人の結果を紐付けることは同意なく行ってはなりません)。
同時期実施の3つの注意点
注意点1: 結果の管理は必ず分離する
最も重要な注意点です。ストレスチェックの結果は、本人の同意がなければ事業者(人事・上司)は閲覧できません。一方、健康診断の結果は事業者が把握して職場環境改善に使うことが前提です。
健診を委託した機関やクリニックの担当者がストレスチェックの実施者を兼ねる場合でも、それぞれの結果の管理システム・保管場所・アクセス権限は完全に分ける必要があります。
注意点2: 実施者と同意書は別途必要
定期健康診断は医師が実施者として主体となりますが、ストレスチェックの実施者は医師に限らず、保健師・歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師も担えます。
また、ストレスチェックでは「結果を事業者に提供することへの同意書」が別途必要です。健診の受診申込書や問診票とは別に、ストレスチェック専用の同意書(または同意確認フロー)を設けてください。
注意点3: 健診のタイミングが分散している場合は要注意
定期健康診断を誕生月ごとに個別実施している事業場では、全員が同じ月に受診しません。ストレスチェックは「全従業員について同時期に実施することが望ましい」(厚生労働省指針)とされているため、健診のタイミングに合わせてストレスチェックも分散実施する場合は、集団分析の対象期間設定に注意が必要です。
推奨スケジュールの組み方
以下は年1回、6月実施の例です。
| 時期 | タスク | 担当 |
|---|---|---|
| 4月 | 衛生委員会で年間計画を策定。健診・ストレスチェックの実施時期・委託先を確認 | 人事・衛生委員会 |
| 5月上旬 | 健診委託先・ストレスチェック実施機関(または実施者)へ正式発注。同意書・案内文書の準備 | 人事 |
| 5月中旬 | 従業員へ健診・ストレスチェック両方の案内通知を送付 | 人事 |
| 6月 | 健診実施(会場または外部機関)。ストレスチェックはWebシステムで並行受検 | 従業員・実施者 |
| 7月 | ストレスチェック結果確定・本人通知。高ストレス者への面接指導案内 | 実施者・人事 |
| 8〜9月 | ストレスチェック集団分析結果・健診有所見率を衛生委員会で共有・改善計画策定 | 産業医・衛生委員会 |
| 12月まで | 労基署への結果報告(e-Gov電子申請。50人以上対象) | 人事 |
外部委託先を選ぶ際のポイント
健診とストレスチェックを同一機関に委託すると管理がシンプルになりますが、以下の点を確認してください。
- 結果の分離保管: 同一機関でも、健診結果とストレスチェック結果を分離して管理するシステムがあるか
- 実施者資格: ストレスチェックの実施者要件(医師・保健師・歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれか)を満たしているか
- 個人情報保護: 要配慮個人情報の取り扱い方針(プライバシーマーク・ISO27001等)を確認する
- 集団分析の提供: 10人以上の部署・グループへの集団分析レポートが含まれるか
まとめ
ストレスチェックと定期健康診断の同時期実施は、従業員負担の軽減・管理効率化の観点から合理的な選択です。ただし「同時実施=一体化」ではなく、「同じタイミングで、別制度として並行実施」であることが大前提です。
結果管理の分離・実施者・同意書の3点を正しく設計することで、法令に準拠しながら効率的な産業保健活動が実現できます。外部委託先の選定や体制構築についてお困りの場合は、FUNBREWにご相談ください。
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