ストレスチェックの未実施は、単なるルール違反にとどまらず、労働基準監督署の指導・勧告・罰則、さらには労災認定や民事訴訟につながるリスクがあります。2015年の義務化以降、行政の対応は年々厳格化しており、「まだやっていない」企業にとってリスクは高まっています。
本記事では、ストレスチェック未実施のリスクと行政指導の実態、そして未実施状態から早急に対応するための手順を解説します。なお既存記事(ID:191)では制度の概要と義務内容を解説していますが、本記事では未実施リスクと行政対応に特化した内容を扱います。
- ストレスチェック未実施に対する法的ペナルティ(50万円以下の罰金)の根拠
- 労基署の調査・指導・勧告のプロセスと実態
- 未実施が発覚するきっかけ(定期監督・労働者の申告・労災申請時)
- 未実施状態から最短で対応するための具体的なステップ
- 継続的な未実施を防ぐための体制整備
ストレスチェック未実施に対する法的ペナルティ
ストレスチェックの実施義務に違反した場合のペナルティを確認します。
労働安全衛生法上の罰則
労働安全衛生法第120条第1号は、同法の規定(ストレスチェック実施義務を含む)に違反した事業者に対して「50万円以下の罰金」を科することができると定めています。ただし、罰金が直接科されるケースは多くなく、多くの場合は行政指導のプロセスを経た後の対応となります。
実際のペナルティの段階的プロセス
| 段階 | 行政の対応 | 事業者がすべき対応 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 労基署からの指導(行政指導) | 指導内容の確認と改善計画の提出 |
| 第2段階 | 勧告(改善が見られない場合) | 勧告内容に従った早急な是正 |
| 第3段階 | 企業名の公表(重大な違反の場合) | 早期改善で名称公表を防ぐ |
| 第4段階 | 司法処分(告発・罰金) | ここまでの到達を避けるための初期対応が重要 |
労基署が調査・指導を行うきっかけ
ストレスチェック未実施が行政の調査対象となるきっかけを把握しておくことが重要です。
主な発覚のきっかけ
- 定期監督(一般定期監督・集中監督):労基署が計画的に事業場を選定して実施する定期的な調査。ストレスチェックは安全衛生関係の確認項目に含まれる
- 是正勧告後の再調査:他の労働法令違反で是正勧告を受けた際に、安全衛生管理全体が点検される
- 労働者からの申告:「うちの会社はストレスチェックをやっていない」という労働者からの申告
- 労働災害(労災)申請時の調査:精神疾患による労災申請があった際に、ストレスチェックの実施状況が調査される
- 労働基準監督署への年次報告の確認:様式第6号の2(ストレスチェック結果等報告書)の未提出が発覚するケース
年次報告書(様式第6号の2)の未提出リスク
特に注意が必要なのが、定期健康診断結果報告書と合わせて提出が必要なストレスチェック等実施状況報告書の未提出です。この報告書を提出しないことも法令違反となり、定期監督時に確認される可能性があります。
未実施が招く民事上のリスク
行政ペナルティより深刻な場合があるのが、民事上(訴訟)のリスクです。
ストレスチェック未実施と安全配慮義務違反
使用者(会社)は労働者に対して「安全配慮義務」を負います(労働契約法第5条)。この義務の一環として、ストレスチェックを通じた従業員のメンタルヘルス状態の把握が求められます。
従業員がうつ病や精神疾患で休職・退職した場合に「会社はストレスチェックを実施せず、高ストレス者を早期に発見する機会を持たなかった」という事実が安全配慮義務違反の根拠として主張されるリスクがあります。
損害賠償請求のリスク
裁判例では、会社が従業員のメンタルヘルス悪化を認識できたにもかかわらず適切な措置を取らなかった場合に、数百万〜数千万円の損害賠償が認められたケースがあります。ストレスチェック未実施はこのような認識の機会を自ら放棄した証拠として主張される可能性があります。
未実施状態から最短で対応する手順
「今からでも間に合う」ストレスチェックの実施対応手順を解説します。
緊急対応ステップ
- 実施機関・産業医の確保(1〜2週間):社内に産業医がいない場合、産業医紹介サービスや外部EAP機関に依頼する。オンライン対応可能な産業医紹介サービスを活用することで最短1〜2週間での確保が可能
- 実施システムの選定(1〜2週間):初期費用が低いクラウド型のストレスチェックシステムを選定。最短数日で使い始められるものもある
- 安全衛生委員会での承認(1回の委員会):実施計画書・質問票・実施要領を安全衛生委員会で審議・承認
- 従業員への周知・実施(2〜4週間):全従業員への案内メール配信、回答期間2〜4週間を設定
- 報告書提出(実施後1か月以内):労基署への報告書提出で法令履行を対外的に証明
継続的な未実施を防ぐ体制整備
一度体制を整備したら毎年確実に実施するための仕組みを構築します。
- 毎年同じ時期(例:毎年6月)に実施することを会社のカレンダーに固定化
- ストレスチェック担当者を明確に決め、引き継ぎプロセスを整備
- 人事カレンダーにリマインダーを設定(実施3か月前・1か月前・2週間前)
- 産業医との年間契約と実施スケジュールの事前合意
- ストレスチェックシステムを年間契約で維持(その都度探す手間を省く)
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まとめ
ストレスチェックの未実施は、50万円以下の罰金という直接的なペナルティより、安全配慮義務違反による民事訴訟リスクの方が実務上の影響が大きいです。行政指導が来てからでは手遅れにならないよう、「今から最短で実施を開始する」ことが最も重要な対応です。
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