ストレスチェックを実施した後、人事・総務担当者が最も対応に悩むのが「高ストレス者」への面談対応です。判定結果の通知から面談の勧奨、実施後のフォローアップまで、一連の流れには法令上の要件と実務上の注意点が数多く存在します。
本記事では、高ストレス者への面談対応を判定基準の確認から記録の保管まで段階ごとに整理し、実務で使えるマニュアルとして解説します。
- 高ストレス者の判定基準には「数値基準」と「補足的面談」の2段階がある
- 面談勧奨は本人の申出が前提であり、強制はできない
- 面談時のプライバシー保護と情報共有範囲には厳格なルールがある
- 面談後の就業上の措置と継続フォローが再発防止の鍵になる
高ストレス者の判定基準を正しく理解する
高ストレス者の判定は、ストレスチェック制度の中核をなす工程です。判定基準を正しく理解していないと、面談対象者の選定段階で齟齬が生じ、後続の対応がすべて狂ってしまいます。
法令が定める判定の枠組み
労働安全衛生法に基づくストレスチェック指針では、高ストレス者の選定方法として以下の2つの要件を示しています。
| 判定要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 要件1 | 「心身のストレス反応」に関する項目の評価点が高い者 | 職業性ストレス簡易調査票のB領域の合計点が一定以上 |
| 要件2 | 「心身のストレス反応」の評価点が一定以上で、かつ「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」の評価点が著しく高い者 | B領域が中程度以上かつ、A領域+C領域の合計が一定以上 |
実務では、厚生労働省が提供する「ストレスチェック実施プログラム」の数値基準をそのまま採用する企業が多い一方で、自社の実情に合わせて基準を調整している企業もあります。基準の設定・変更は実施者(医師等)の意見を踏まえて決定する必要があります。
数値基準の設定パターン
判定基準には大きく分けて「素点換算表方式」と「合計点方式」の2種類があります。素点換算表方式は尺度ごとに5段階に換算してから評価する方法で、合計点方式は各項目の素点を単純に合算する方法です。
どちらを採用するかは事業場の衛生委員会で審議のうえ決定しますが、素点換算表方式のほうがストレス要因の偏りを検出しやすいとされています。厚労省の実施マニュアルでは素点換算表方式を推奨しています。
面談勧奨の進め方と注意点
高ストレス者と判定された従業員に対して、事業者は医師による面接指導を受けることを勧奨します。ただし、面接指導の申出はあくまで本人の意思に基づくものであり、事業者が強制することはできません。
勧奨通知の実務フロー
面談勧奨の典型的な流れは以下のとおりです。
まず、ストレスチェックの結果は実施者から本人に直接通知されます。この時点で「高ストレス者に該当する」旨と「面接指導を申し出ることができる」旨が伝えられます。結果通知後、一定期間(概ね1か月程度)を経ても申出がない場合、実施者または実施事務従事者から改めて勧奨の連絡を行います。
勧奨は原則として1回までとすることが望ましいとされていますが、職場環境や過去の面談実績を踏まえて、衛生委員会で回数を定めておくと運用がスムーズになります。
申出率を高めるための工夫
全国の平均的な面談申出率は、高ストレス者全体の10〜20%程度にとどまるとされています。申出率を改善するために効果的な施策をまとめました。
| 施策 | 内容 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 外部相談窓口の併設 | 社内面談に抵抗がある人向けにEAP等の外部窓口を案内 | 心理的ハードルの低減 |
| 面談経験者の声の紹介 | 匿名で「面談を受けてよかった点」を社内報等で共有 | 面談に対する誤解の解消 |
| 申出方法の簡素化 | Web申請や専用フォームで24時間申出可能にする | 手続き面の障壁排除 |
| セルフケア情報の同時提供 | 結果通知と併せて具体的な対処法の情報を提供 | 制度全体への信頼向上 |
特にWeb申請やシステムでの申出管理は、担当者の業務負荷を大幅に削減できます。ストレスチェックの業務効率化を検討している企業にとって、面談申出のオンライン化は最初に取り組むべき領域の一つです。
面接指導の実施における留意事項
面接指導は、申出から概ね1か月以内に実施することが求められます。実施にあたっては、場所の選定からヒアリング内容、記録方法まで、複数の要素に配慮が必要です。
面談環境の整備
面接指導は、他の従業員から見えない個室で行います。オンライン面談も認められていますが、その場合でもプライバシーが確保される環境(個室・イヤホン使用等)を本人に確認してください。
面談の所要時間は一般的に30分〜1時間程度です。医師が確認すべき事項は厚労省の指針で定められており、以下の3項目が中心になります。
第一に、当該労働者の勤務状況(労働時間、業務内容、直近の業務変更の有無など)です。第二に、ストレスチェック結果に基づく心身の状況の確認です。第三に、その他心身の健康に関する事項(睡眠、食欲、通院状況など)です。
プライバシー保護の原則
面接指導の結果は、本人の同意なく事業者に提供してはならないのが大原則です。医師が事業者に提出する意見書には、就業上の措置に必要な範囲の情報のみを記載します。
具体的には、「通常勤務可」「就業制限が必要」「要休業」といった判定区分と、必要な措置の内容(時間外労働の制限、作業転換など)が記載されます。診断名や具体的な症状は、本人の同意がない限り事業者には共有されません。
この情報管理の仕組みは、制度への信頼を維持するうえで極めて重要です。ストレスチェック制度の法的要件では、情報の取扱いに違反した場合の罰則についても定められています。
面談後のフォローアップと就業上の措置
面接指導が終わった後が、むしろ実務担当者にとって重要な局面です。医師の意見を踏まえた就業上の措置の実施と、その後の経過観察をどう進めるかが、制度の実効性を左右します。
就業上の措置の実施手順
事業者は面接指導の結果について、医師から意見を聴取し、必要に応じて就業上の措置を講じます。措置の内容は以下のように分類できます。
| 措置区分 | 具体的な対応例 | 実施上の注意点 |
|---|---|---|
| 就業制限 | 時間外労働の制限、深夜業の回数制限、出張制限 | 本人の不利益にならないよう配慮が必要 |
| 作業転換 | 業務内容の変更、配置転換 | 本人の意向を十分に確認する |
| 職場環境改善 | 業務量の調整、上司との関係改善支援 | 集団分析の結果と合わせて検討する |
| 経過観察 | 一定期間後の再面談、定期的な状況確認 | フォロー漏れを防ぐ仕組みが必要 |
措置を講じた後は、その効果を一定期間モニタリングし、必要に応じて措置内容を見直します。この経過観察のプロセスが抜け落ちると、「面談はしたが改善されていない」という状態が放置されるリスクがあります。
継続フォローの仕組みづくり
フォローアップを確実に実施するためには、担当者個人の記憶や手帳に頼らない仕組みが不可欠です。フォロー対象者のリスト管理、次回確認日のリマインド、対応履歴の記録といった業務は、システム化との相性が極めて高い領域です。
スクラッチ開発によるストレスチェックシステムであれば、面談管理からフォローアップまでを一気通貫で管理する機能を実装できます。既製パッケージでは対応しきれない自社固有のフォローフローにも柔軟に対応可能です。
記録の保管と管理体制
ストレスチェック関連の記録は、法令上5年間の保存が義務付けられています。面接指導の結果記録についても同様です。保管にあたっては、情報へのアクセス権限を厳格に管理する必要があります。
保管すべき記録の範囲
保管が必要な記録は、ストレスチェックの個人結果、面接指導の実施記録、医師の意見書、就業上の措置の内容と実施状況、事後フォローの経過記録です。これらを紙で管理している企業も少なくありませんが、5年分の記録を安全かつ検索可能な状態で保管するには、電子化が現実的な選択肢です。
ストレスチェック実施ガイドでも触れていますが、記録管理は実施体制の構築段階で設計しておくべき事項です。後から「記録が見つからない」「誰がアクセスしたか分からない」という事態になると、制度運用全体の信頼性が損なわれます。
情報管理のシステム化による解決
記録管理における課題の多くは、システム化によって解決できます。アクセスログの自動記録、権限管理の一元化、保存期間の自動管理、監査対応のレポート出力など、手作業では煩雑になりがちな業務を自動化できるためです。
ストレスチェックシステムの選び方を検討する際は、面談管理・記録保管機能の充実度を重要な比較ポイントとして確認しましょう。特に、フォローアップ管理とアクセス制御が標準搭載されているかどうかは、実務運用の質に直結します。
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