ストレスチェックの実施時期に関する法律の規定
ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10および労働安全衛生規則第52条の9に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場では1年以内ごとに1回の実施が義務付けられています。
重要なのは、法律は「いつ実施するか(具体的な月)」は定めていないという点です。毎年何月に実施するかは、各事業場が衛生委員会で審議した上で自由に決定できます。担当者が悩む「何月に実施すれば正解か?」という問いに対して、法律の答えは「1年以内に1回完了すれば何月でも構わない」となります。
| 規定項目 | 内容 |
|---|---|
| 法的根拠 | 労働安全衛生法第66条の10・安衛則第52条の9 |
| 実施頻度 | 1年以内ごとに1回(完了ベース) |
| 実施月 | 各事業場が衛生委員会で決定(法律の定めなし) |
| 義務対象 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場 |
| 努力義務 | 50人未満の事業場(2028年4月1日施行方針で義務化予定) |
実施時期を決める際の4つの考慮点
1. 定期健康診断との同時実施
最も一般的なのは、定期健康診断と同じ時期にストレスチェックを実施する方法です。厚生労働省も同時実施を推奨しており、以下のメリットがあります。
- 受検率が向上しやすい(健診と一緒に案内するため)
- 事務担当者の管理工数が削減できる
- 衛生委員会での報告をまとめて行える
- 労基署への報告書の提出時期が揃う
注意点として、健診結果とストレスチェック結果は別々に管理する必要があります。事業者が健診と同じ感覚でストレスチェックの個人結果を閲覧しようとする誤りが現場では散見されます。ストレスチェックの個人結果は本人の同意なく事業者に開示することが禁止されています。
2. 繁忙期を避ける
受検率を高めるためには、繁忙期を避けた時期を選ぶことが重要です。繁忙期に実施すると受検率が低下し、未受検者への再依頼対応が増える悪循環が生じます。
業種別に繁忙期の傾向は異なりますが、一般的に注意が必要な時期は以下のとおりです。
- 年度末・年度始め(3〜5月):決算・異動・新入社員研修
- 夏季繁忙期(7〜8月):小売・観光・食品業
- 年末商戦(11〜12月):EC・小売・製造業
- 税務申告期(1〜3月):会計・税理士事務所
繁忙期の受検率低下は全体の結果精度にも影響します。同一部署で特定のメンバーだけが未受検のままだと、集団分析の10人以上という集計単位を割り込み、そのグループの職場改善データが取れなくなることもあります。
3. 実施者の確保可能な時期
ストレスチェックには実施者(医師・保健師・歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれか)が必要です。外部委託を使う場合も、委託先の繁忙期(多くの企業が一斉に実施する11〜3月)は費用が高くなる傾向があります。6〜9月などの閑散期を狙うと費用を抑えられる場合があります。また、高ストレス者への面接指導担当医師の確保も実施時期に影響するため、産業医との調整を早めに行うことが重要です。
4. 前回実施からの期間管理
「1年以内ごとに1回」とは、前回の実施完了日(全受検者への結果通知完了)から1年以内に次の実施を完了させることを意味します。実施開始日ではなく「完了日」が基準になるため、受検期間・集計・個人への結果通知のスケジュールも含めて逆算した計画が必要です。
年間スケジュールの立て方(11月実施の例)
実施時期が決まったら、逆算して年間スケジュールを組みます。以下は11月実施を例とした標準的なスケジュールです。
| 時期 | 実施事項 |
|---|---|
| 8〜9月 | 衛生委員会で実施計画を審議・決定。外部委託先との契約確認。実施規程の見直し。 |
| 10月上旬 | 従業員への実施案内(受検勧奨通知)の送付。実施規程・プライバシーポリシーの共有。 |
| 11月 | ストレスチェック実施(受検期間2〜3週間確保が目安)。未受検者へのリマインド。 |
| 11月末〜12月 | 集計・個人への結果通知。高ストレス者への面接指導案内(申出期限を設定)。 |
| 1〜2月 | 集団分析の実施・衛生委員会での報告。職場環境改善の審議と記録。 |
| 3〜4月 | 労基署へのストレスチェック結果報告書を提出(健康診断結果報告書と同期限)。 |
複数事業場がある場合の時期統一と分散実施
複数の事業場を持つ企業では、全事業場で同じ時期に実施する「統一実施」と、事業場ごとに時期をずらす「分散実施」の選択があります。
統一実施のメリットは、管理が一元化できること、全社の集団分析が同一期間のデータで比較できることです。一方、分散実施のメリットは事業場ごとの繁忙期を避けやすく、担当者の負荷が集中しない点にあります。
どちらを選ぶにしても、「1年以内ごとに1回」の要件を各事業場が満たしているか個別に管理することが必要です。特に事業場数が多い企業では、全事業場の実施完了日と次回期限を管理台帳で一覧化しておくことを推奨します。
実施時期を変更する場合の注意点
やむを得ない事情(組織再編・大規模災害・感染症のまん延等)で実施時期を変更する場合でも、前回の実施完了日から1年を超えてはいけません。時期変更は衛生委員会で審議・記録し、1年の間隔が空かないよう計画してください。
なお、「今年は実施できなかった」という状況は義務違反(労安衛法第120条、50万円以下の罰金)となります。繁忙期と重なりそうな場合は、早めに代替日程を衛生委員会で決議し、担当役員・産業医・外部委託先に連絡しておくことが大切です。
まとめ
- ストレスチェックの実施時期は「1年以内ごとに1回(安衛則第52条の9)」の規定のみで、具体的な月は各事業場が自由に決められる
- 定期健康診断との同時実施は厚生労働省推奨の方法で受検率向上・工数削減効果がある
- 繁忙期を避けることで受検率が高まり、集団分析の精度も向上する
- 複数事業場は統一実施か分散実施を選び、各事業場の完了日と次回期限を一覧管理する
- 実施時期の変更は衛生委員会で決議し、前回完了日から1年以内を厳守する
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