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労務・人事

厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」の解説|2028年義務化に備える実務ガイド

2026年5月28日 約5分で読めます
この記事でわかること
  • 厚生労働省が2026年2月公表のマニュアルに書かれている実施手順の概要
  • 50人未満事業場が活用できる質問票(57項目・23項目)の選び方
  • 地域産業保健センターを使った低コスト実施体制の作り方
  • プライバシー保護と外部委託の判断基準
  • 2028年4月1日の義務化に向けた準備タイムライン

はじめに ― マニュアル公表の背景

2025年5月14日、改正労働安全衛生法が公布されました。これにより、これまで「努力義務」にとどまっていた従業員50人未満の事業場でも、2028年4月1日からストレスチェックが義務化される方針が示されています(施行日は政令で確定)。

この義務化に先立ち、厚生労働省は令和8年(2026年)2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を正式に公表しました。50人未満の事業場がストレスチェックをスムーズに導入できるよう、具体的な手順・様式・外部リソースの活用方法をまとめたものです。

2028年の義務化まであと約1年半です。「まだ先の話」と感じるかもしれませんが、制度設計・担当者選任・システム選定には6ヶ月〜1年かかることが多く、今から準備を始めることで余裕を持った対応が可能です。

マニュアルが示す実施フロー(5ステップ)

厚生労働省のマニュアルでは、小規模事業場向けの実施手順を以下の5ステップで整理しています。

ステップ1:事業者方針の表明と体制整備

まず、経営者がストレスチェックを導入する方針を公式に表明します。目的(職場環境改善・労働者のメンタルヘルス保護)と個人情報の取り扱いルールを明文化し、衛生委員会(または労働者代表等)で審議・周知します。

  • 担当者(実施事務従事者)を1名以上選任する
  • 実施者(医師・保健師・公認心理師・歯科医師など)を確保する。自社に産業医がいない場合は地域産業保健センターへ相談する
  • 個人情報保護のため、外部委託の活用を検討する

ステップ2:質問票の選択と配布

マニュアルでは2種類の質問票が紹介されています。

質問票項目数特徴推奨ケース
職業性ストレス簡易調査票57項目国内標準・集団分析精度が高い精度重視・50人以上の事業場が多い
簡略版調査票23項目回答負担が少ない・実施しやすい初めて実施する・小規模事業場

厚生労働省の無料プログラム(厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム)を利用すれば、調査票の配布・回収・集計を低コストで実施できます。

ステップ3:結果の通知と高ストレス者への対応

ストレスチェックの結果は、本人へ直接通知します。本人の同意なく事業者(会社)に結果を提供することは禁止されています。

  • 高ストレスと判定された労働者には、医師による面接指導を勧奨する
  • 面接指導の申し出があった場合は、1ヶ月以内に実施する
  • 産業医がいない事業場は、地域産業保健センターの医師に依頼できる

ステップ4:集団分析と職場環境改善

10人以上の集団単位で職場全体のストレス状況を集計・分析し、結果を職場環境改善に活かすことが推奨されています。小規模事業場では全体の人数が少ないため、個人が特定されないよう配慮が必要です(マニュアルでは10人以上の単位で集計することを基本としています)。

ステップ5:労基署への報告(義務化後・50人以上の事業場が対象)

2028年4月1日の義務化後、50人以上の事業場は年1回、結果を労働基準監督署に報告する義務があります。義務化後の報告義務の詳細については、政令確定後に改めて確認することをおすすめします。

地域産業保健センターの無料サポートを活用する

50人未満の事業場が最も活用すべき外部リソースが地域産業保健センター(産保センター)です。全国47都道府県に設置されており、以下のサービスが無料で利用できます。

  • ストレスチェック実施に関する相談・アドバイス
  • 実施者(医師)の紹介・斡旋
  • 高ストレス者への面接指導(医師との連携)
  • 職場環境改善の助言

産保センターへの問い合わせは各都道府県の労働局または厚生労働省のウェブサイトから確認できます。独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営するストレスチェック制度サポートダイヤル(0570-031050)でも専門相談が可能です(平日10時〜17時)。

「産業医と契約するには費用がかかる」と感じている50人未満の事業場こそ、産保センターを積極的に使うべきです。相談から面接指導まで無料で対応してもらえるケースが多く、義務化後の運用コストを大幅に抑えられます。

外部委託の判断基準

プライバシー保護の観点から、厚生労働省のマニュアルは外部委託の活用を推奨しています。

項目自社実施外部委託
費用低(無料ツール活用時)中(1人あたり500〜2,000円程度)
プライバシー保護管理が難しい物理的に分離できる
担当者の負荷
実施者の確保自社手配が必要委託先が手配

従業員に「上司に結果が知られるかもしれない」という不安を与えないためにも、外部委託によって回答・結果管理を会社から切り離すことが、回答率の向上にもつながります。

2028年義務化に向けた準備タイムライン

時期アクション
今すぐ〜2026年中マニュアルを読み込み、産保センターへ相談・体制検討
2027年上半期担当者選任・実施方法確定・外部委託業者の選定
2027年下半期試行実施(プレ運用)・社内周知・システム設定
2028年4月〜義務化対応として正式実施開始(施行日は政令で確定)
2029年3月まで最初の実施完了期限の見込み

まとめ

  • 2026年2月に厚生労働省のマニュアルが公表。50人未満事業場の実施手順が具体化された
  • 質問票は57項目か23項目を選択。初実施の小規模事業場には23項目版も現実的な選択肢
  • 地域産業保健センターの無料サポートを積極的に活用することで、実施者確保と費用を抑えられる
  • 外部委託でプライバシーを物理的に切り離すことが、回答率向上と法令遵守の両面で有効
  • 2028年4月1日の義務化(施行日は政令で確定の方針)に向け、今から体制整備を始めることで余裕を持った準備が可能
よくある質問
厚生労働省のマニュアルはどこで入手できますか?
厚生労働省のウェブサイト(mhlw.go.jp)から無料でダウンロードできます。「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」として令和8年(2026年)2月25日に公表されています。様式のひな形(編集可能なWord形式)も同時に公開されており、自社の就業規則や社内通知文の作成に活用できます。
50人未満の事業場はいつからストレスチェックが義務になりますか?
2028年4月1日から義務化される方針が2026年5月の労政審で示されました(施行日は政令で確定)。最初のストレスチェック実施期限は2029年3月31日までが見込まれます。ただし「方針」の段階であり、政令確定後に正式な施行日が決定します。準備には6ヶ月〜1年かかるため、今から体制検討を始めることを推奨します。
産業医がいない事業場でもストレスチェックを実施できますか?
はい、実施できます。実施者(医師・保健師・公認心理師・歯科医師など)は、地域産業保健センターに相談して確保することが可能です。産保センターは全国47都道府県に設置されており、50人未満の事業場向けに実施者の紹介・面接指導の支援を無料で行っています。
質問票は57項目と23項目のどちらを使えばよいですか?
どちらを使っても法令上は問題ありません。初めて実施する小規模事業場には、回答負担が少ない23項目版(簡略版)が現実的な選択肢です。一方、集団分析の精度や他社比較データとの照合が必要な場合は57項目版(職業性ストレス簡易調査票)が推奨されます。厚生労働省の無料プログラムはどちらにも対応しています。
ストレスチェックの結果を会社が閲覧することはできますか?
個人の結果は、本人の同意なく事業者(会社)に提供することは禁止されています。高ストレス者が面接指導を申し出た場合に初めて、就業上の措置に必要な範囲で情報共有が認められます。集団分析の結果(10人以上の集計)は事業者に提供できます。プライバシー保護のため、外部委託によって個人データを会社から切り離す方法が推奨されています。

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