この記事のポイント
- ストレスチェックの受検は従業員の義務ではなく、強制は禁止されている
- 事業者には受検を促す「勧奨の努力義務」があり、記録を残すことが重要
- 未受検者への対応は3ステップ(一斉リマインド→個別声かけ→意思確認と記録)で行う
- 2028年4月施行予定の50人未満義務化では、プライバシー説明が受検率の鍵になる
ストレスチェックは強制できるのか?法的な位置づけの整理
ストレスチェックは労働安全衛生法第66条の10に基づく制度ですが、従業員本人の受検は義務ではなく、あくまで「努力義務」です。事業者は実施する義務を負いますが、個々の従業員に受検を強制することはできません。
一方で、事業者には「受検するよう勧奨すること」の努力義務があります(同条第2項)。つまり「促す努力は必要だが、強制はできない」というのが制度の基本的な考え方です。
未受検者が出る主な理由とその対処法
未受検の背景にはさまざまな事情があります。対処法もそれぞれ異なります。
| 未受検の理由 | 対処のポイント |
|---|---|
| 制度を知らない・忘れていた | 受検期間中にリマインド通知(メール・掲示)を複数回送る |
| プライバシーが心配 | 結果が会社に伝わらない仕組みを丁寧に説明する |
| 回答内容が怖い・不安 | 「健診と同様のもの」として個人に寄り添う説明を行う |
| 受検する時間・機会がない | 実施期間の延長、紙・オンライン両対応で柔軟に対応する |
| 意図的な拒否 | 1回の案内で終わらせず、個別の声かけと記録を残す |
未受検者への勧奨手順:3ステップ
未受検者が出た場合は、以下の手順で記録を残しながら丁寧にフォローします。勧奨は義務ですが、あくまで受検を促すものであり、強制や不利益取り扱いにならない範囲で実施することが重要です。
ステップ1:一斉リマインド(受検期間中)
受検期間の折り返し地点と終了3日前に、未受検者全員へメールや社内掲示でリマインドを送ります。この時点では個別名指しではなく、全体向けのアナウンスとして実施します。「スマートフォンからでも受検できます」「回答は15分程度で完了します」など、受検のハードルを下げる情報を一緒に案内すると効果的です。
ステップ2:個別の声かけ(受検期間終了後)
期間終了後も未受検の従業員がいる場合は、所属長や人事担当者から個別に確認します。「体調不良や多忙であれば期間を調整できる」「スマートフォンでも受検できる」など、受検の障壁を取り除く声かけが効果的です。この声かけと従業員の反応は記録しておきます。声かけの際に「なぜ受検しないのか」を問い詰めるような姿勢は避け、あくまでサポートの姿勢で接することが重要です。
ステップ3:受検意思の最終確認と記録
個別声かけ後も受検しない場合は、本人に「今回は受検しない」という意思確認を行い、記録として残します。記録には「受検できなかった理由(任意)」「勧奨を行った日時と担当者」を含めます。この記録は、万が一の労基署調査時に「事業者として適切な勧奨を行った」証明になります。
未受検者の比率が高い場合のチェックポイント
受検率が70〜80%を下回る場合、個別対応だけでなく制度の周知・運営方法の見直しが必要です。以下を確認してください。
- 受検期間は十分か?:最低2週間、できれば1ヶ月程度確保する
- 受検方法は多様か?:Webのみ・紙のみに限定せず、両方対応する
- プライバシー説明を行ったか?:結果が会社に伝わらない仕組みを全員に説明したか
- アクセス環境は問題ないか?:パソコンを持っていない・メールを確認しない層への対策
- 上司・経営陣が率先して受検しているか?:管理職の受検率が低いと部下に示しがつかない
受検率の記録と報告書への記載
毎年の受検率は労働基準監督署への報告書(様式第6号の2)に記載します。受検率が低い場合でも正確な数値を記載することが求められます。厚生労働省の調査によると、義務化事業場全体の平均受検率は全国でおよそ75〜80%前後とされています(令和5年労働安全衛生調査)。
また、受検率は翌年に向けた改善の指標にもなります。部署別・雇用形態別に集計しておくと、特定グループの受検率が低い場合の原因分析に役立ちます。業種によっても平均値は異なり、製造業・金融業では比較的高く、接客・清掃業などでは低い傾向があります。自社の業種の平均と比較しながら目標値を設定することが実務的です。
50人未満企業が義務化後に直面する未受検問題
2028年4月からストレスチェックが50人未満企業にも義務化される見込みです(2025年5月14日公布の改正労安衛法)。初めて実施する企業では「受けてもらえない」という問題が多く発生します。
小規模事業場では従業員同士の関係が近く、プライバシーへの不安が特に高い傾向があります。外部委託先のシステムを利用する際は、「結果は外部機関が管理し、事業者には個人の結果は届かない」という仕組みを明示することが受検率向上の鍵です。また、地域産業保健センターでは50人未満事業場向けの無料相談・支援を提供しており、初めて実施する企業の強い味方になります。外部委託先を選ぶ際は、「未受検者へのリマインド機能があるか」「受検方法(Web・紙)の選択肢があるか」も確認ポイントです。
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