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労務・コンプライアンス

ストレスチェック実施事務従事者の年間業務フローと社内運営マニュアル

2026年6月2日 約5分で読めます
この記事のポイント
  • 実施事務従事者(人事・総務担当者)が1年間で行う全業務を月別で整理
  • 担当者交代しても困らない社内マニュアルの必須項目と作り方
  • よくある失敗(実施計画書の漏れ・守秘義務違反・保管ミス)の防止策
  • 50人未満企業が2028年義務化に備えてすぐ始められる準備ステップ

実施事務従事者とは:役割の基本を押さえる

ストレスチェック制度において「実施事務従事者」とは、実施者(医師・保健師等)の指示のもとで受検案内の送付・回答データの集計補助・結果通知の発送などを担う役割です。多くの企業では人事・総務部門の担当者がこの役割を担います。

実施者との違い:実施者は資格が必要で「結果の判定・高ストレス者の選定」を行いますが、実施事務従事者は資格不要です。ただし守秘義務が課される(労働安全衛生法第104条。違反した場合は同法第119条第1号により6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)ため、業務で知り得た個人の結果を無断で他者に伝えることは禁じられています。

年間業務フロー:月別でやるべきことを整理する

ストレスチェックは「年1回」の実施が義務ですが、前後の準備・事後処理を含めると実質的な業務は年間を通じて発生します。

前年度末〜4月:年間計画の策定と衛生委員会への付議

  • 実施時期・実施方法(紙・WEB)・実施者の選定
  • 外部委託先の選定または継続確認(契約更新)
  • 衛生委員会または類似組織での「実施方法の調査審議」→議事録作成
  • 実施規程の確認・改訂(50人未満は努力義務だが作成を推奨)

実施1ヶ月前:従業員への周知・準備

  • 実施計画書の作成(受検対象者リスト・スケジュール・実施者氏名・委託先情報)
  • 全従業員への案内文書の配付・社内掲示(受検目的・個人情報保護の説明を必ず含める)
  • WEBシステムの場合はID・パスワードの発行・動作確認
  • 受検対象者の確定(常時50人以上の事業場)

実施期間中:受検管理と守秘義務の徹底

  • 受検状況のモニタリング(未受検者への個別案内。ただし受検を強制しないよう注意)
  • 回答データの集計補助(実施者の指示のもとで行う)
  • 個人の回答内容を閲覧・管理するアクセス権限の限定
受検していない従業員への個別連絡は「案内」の範囲にとどめ、受検理由を追及したり上司から圧力をかけたりしないことが重要です。強制受検は制度の信頼性を損ない、受検率低下の原因にもなります。

結果通知・面談対応:実施後3週間以内が目安

  • 実施者(医師・保健師等)による判定結果の確定
  • 従業員本人への結果通知(封緘郵送・WEBシステム上での通知)
  • 高ストレス者への面談申し出案内(1ヶ月以内に申し出られる期間を設ける)
  • 面談申し出があった場合:産業医との日程調整・意見書管理

集団分析・職場改善:実施から2〜3ヶ月以内

  • 集団分析の結果取りまとめ(10人以上の部署単位が原則)
  • 衛生委員会での集団分析結果の共有・職場改善計画の策定
  • 改善計画の記録と次回実施での検証準備

年度末〜翌期報告:労基署報告と記録保存

  • 労働基準監督署への報告(常時50人以上の事業場が義務。実施後1年以内に提出)
  • 様式は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2)」を使用
  • 2025年1月から電子申請が原則義務化(e-Gov電子申請から提出)
  • 結果データの保存(5年間の保存を推奨)

社内マニュアルの必須記載項目

担当者交代・人事異動があっても業務が滞らないよう、以下の項目を盛り込んだ社内マニュアルを作成することを強く推奨します。

1. 実施体制

実施者の氏名・資格・連絡先、実施事務従事者の氏名と担当業務の範囲、外部委託先の会社名・担当者・緊急連絡先を一覧化します。

2. 守秘義務の範囲と情報管理ルール

「誰が何の情報にアクセスできるか」を明文化します。特に人事権を持つ管理職への結果の無断共有は違法です(労働安全衛生法104条)。同意書なしに結果を事業者に提供することを禁じる旨を明記します。

3. 年間スケジュールと標準作業手順

上記の月別フローをベースに、自社の実施時期・使用システム・外部委託先対応の具体的な手順をステップごとに記載します。

4. 緊急時・例外対応手順

高ストレス者が面談申し出後に辞退した場合、自殺企図が疑われる場合、外部委託先のシステム障害が発生した場合などの対応フローを定めておきます。

5. 記録・保存ルール

受検結果・面談記録・集団分析結果・衛生委員会議事録の保存期間と保存場所を明記します(個人結果は5年間保存推奨)。

よくある失敗と防止策

よくある失敗防止策
実施計画書を作らずに実施した毎年3〜4月に作成する「年間カレンダー」にタスクとして組み込む
守秘義務の範囲を理解せず管理職に結果を伝えたマニュアルに「同意書なし共有禁止」を明記し、担当者研修を実施
未受検者に受検を強く促して問題になった案内文書のひな型を標準化し、「任意受検・強制でない」旨を明記
担当者異動で過去の記録がどこにあるか不明になった共有フォルダに年度別フォルダを作成し、保存ルールをマニュアルに明記
労基署報告の電子申請義務化を知らず書面提出した年間スケジュールに「e-Gov電子申請」を固定タスクとして登録

50人未満企業が今から準備できること

2028年4月1日からの義務化方針を受け、今から準備を始めることで義務化後のスムーズな実施が可能です。

  1. 実施者の確保:産業医・保健師と契約していない場合は、外部の実施機関(産業保健サービス会社)を探し始める
  2. 社内体制の整備:実施事務従事者になる担当者を決め、守秘義務の内容を研修で周知する
  3. 試験的実施:義務化前に1回試験実施すると、課題を把握して本番に備えられる
  4. 助成金の確認:産業保健活動に関する助成制度は年度ごとに内容が変わるため、最新情報は厚生労働省または地域の産業保健総合支援センターで確認する
FUNBREWでは、ストレスチェック実施管理システムの導入支援から、実施事務従事者向けの社内マニュアル作成サポートまで、企業の規模・体制に合わせた支援を提供しています。50人未満の義務化対応も含め、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
実施事務従事者に資格は必要ですか?
資格は不要です。人事・総務部門の一般担当者でも就くことができます。ただし、守秘義務(労働安全衛生法104条)が課されるため、業務で知り得た個人の結果を無断で第三者(上司・人事権保有者を含む)に伝えることは禁じられています。
実施事務従事者と実施者を同一人物が兼ねることはできますか?
可能です。産業医や保健師が実施者と実施事務従事者の両方の役割を担うことは認められています。ただし、社内の人事・総務担当者が「実施者」になることはできません(医師・保健師等の資格が必要)。
労基署への報告はいつまでに行う必要がありますか?
ストレスチェック実施後1年以内が報告期限です(定期健康診断とは異なります)。実務上は年度末(翌年3月末)を目安に報告することが多いですが、期限内であれば問題ありません。対象は常時50人以上の事業場で、e-Gov電子申請でも提出できます。
実施結果の保存期間はどのくらいですか?
個人の受検結果は5年間の保存が推奨されています(法令上の明示規定はなく推奨ですが、次回実施との比較や高ストレス者フォローの記録として5年間保存が実務上の標準です)。集団分析の結果も同様に5年間保存することを推奨します。
担当者が交代した場合、前任者からどんな情報を引き継ぐべきですか?
最低限①外部委託先の連絡先・契約内容、②過去の実施結果データの保存場所、③実施者の氏名・連絡先、④衛生委員会の議事録、⑤高ストレス者の面談記録(産業医管理分)の所在を確認・引き継ぐ必要があります。社内マニュアルにこれらの情報を一元化しておくことが最善策です。
50人未満の事業場はいつからストレスチェックが義務になりますか?
2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場も義務化対象になることが決まりました。施行日は2028年4月1日とする方針が2026年5月の労働政策審議会で示されており、政令での確定後に正式決定となります。第1回の実施は2029年3月31日までに完了が必要です。

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