営業と実務(エンジニア)が分かれた開発会社への発注自体は問題ではありません。ただし営業担当がシステムの中身に関与せず「御用聞き」で案件を投げるだけの体制では、意思疎通の遅れ・要望の伝達ミス・実務者の技術力のばらつきが起きやすくなります。見積もり段階で実務担当者と直接話せるかを確認することが、契約前の最も有効な見分け方です。
受託開発会社の中には、「営業担当」と「実務担当(エンジニア)」が明確に分かれている会社があります。結論から言うと、この体制自体が悪いわけではありません。ただし、営業担当がシステムの中身に詳しくないまま御用聞きをして案件をメンバー(業務委託を含む)に振り分けるタイプの会社では、意思疎通の遅れ・要望の伝達ミス・実務者の技術力のばらつきといった問題が起きやすくなります。これは、他社が開発した既存システムを引き継ぐ案件で複数回観察してきた実感です。
「営業と実務が分かれた開発会社」とはどんな体制か
ここで言う「営業と実務が分かれた開発会社」とは、顧客対応を専任の営業担当が行い、実際の設計・開発は別のエンジニア(社員とは限らず、業務委託のメンバーを含む)が担当する体制の会社を指します。営業担当はコミュニケーションが得意な人が多く、顧客の要望を丁寧にヒアリングして案件化する役割を担います。一方で、システムの技術的な実現可能性や工数の見立てには詳しくないことが多く、その判断は実務担当に委ねられます。
なぜ発注側の困りごとにつながりやすいのか
この体制そのものが問題なのではなく、営業担当がシステムの中身に踏み込まず「御用聞きをしてメンバーに投げるだけ」になっているときに、発注側から見えにくい形でいくつかの課題が生まれます。
課題1: 顧客と会話してから次のアクションが遅い
営業担当が要望を聞いた後、実務担当に確認してから回答するというワンクッションが毎回入るため、意思決定のスピードが落ちます。緊急の障害対応や仕様変更の相談で、この「間に人が挟まる」構造がボトルネックになることがあります。
課題2: 専門知識のない伝達によって要望が誤って伝わる可能性
営業担当がシステムの専門知識を十分に持たないまま実務担当へ要望を伝えると、ニュアンスや技術的な制約が抜け落ちたまま案件化されることがあります。結果として、実務担当が着手した段階で「聞いていた話と違う」というズレが表面化しやすくなります。
課題3: 営業担当が対応可能な範囲を超えた約束をしてしまうことがある
顧客の意図をうまく汲めることは営業担当の強みですが、その分「これくらいならできます」と踏み込んだ回答をしてしまい、実際にはエンジニア側で対応が難しい、というケースが起こり得ます。これは営業と実務が分かれた会社に限らず、開発会社全般で起こり得る課題です。
課題4: 投げた先のメンバーの技術力にばらつきが出ることがある
案件を業務委託のメンバーに振り分ける体制では、投げた先の技術力が案件ごとに異なることがあります。特に、費用を抑えることを優先した価格設定の場合、経験の浅いエンジニアに割り振られているケースも見られます。
この体制にも良い面はある
営業と実務が分かれた体制を一方的に否定するのは実態に合いません。営業担当はコミュニケーションを専門にしている分、顧客の意図をうまく汲み取れる場合があります。「何を作ってほしいかをうまく言語化できない」という発注側の悩みに対しては、むしろこうした営業担当が間に立つことでスムーズに進むケースもあります。問題になるのは、営業担当がシステムの中身に関与しないまま「窓口」だけを担い、実務側とのすり合わせが機能していないときです。
発注前に見分けるにはどこを確認すればいいか
契約前の打ち合わせの段階で、次のような点を確認すると、実務側との連携が機能しているかどうかの手がかりになります。
- 技術的な質問への回答の具体性: 「できます」「大丈夫です」といった抽象的な回答だけでなく、実現方法や制約についてどこまで具体的に説明できるかを見る
- 見積もり段階での実務担当者の関与: 見積もりや要件のすり合わせに、実際に手を動かすエンジニアが同席・関与しているか
- 再委託・体制についての質問への答え方: 誰が実際に開発を担当するのか(社内メンバーか、業務委託のメンバーか)を尋ねたときに、はぐらかさず答えてもらえるか
- 要望の折り返しの速さと精度: 質問や相談を投げてから、実務に即した精度の高い回答が返ってくるまでの時間
特に、既存システムの保守・引き継ぎでは、契約後に実務担当と直接やり取りできるかどうかが、その後のスピード感を大きく左右します。契約時の確認ポイントはシステム開発の契約前に確認すべきポイントでも解説しています。
まとめ:体制の良し悪しではなく「実務との距離」を見る
営業と実務が分かれた開発会社に発注すること自体は問題ではありません。見るべきは、営業担当がシステムの中身にどれだけ関与し、実務担当とのすり合わせがどれだけ機能しているかです。見積もり段階で実務担当者と直接話せるか、技術的な質問に具体的な回答が返ってくるかを確認することで、契約後の意思疎通の遅れや要望の伝達ミスといったリスクを事前に減らせます。
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