- システム保守の外注先で起きがちなトラブルの種類と原因
- SLA違反が発生したときの記録・クレーム・交渉の手順
- 連絡不通・対応遅延が続く場合の段階的対処法
- 契約解除・外注先切り替えの条件と手順
システム保守の外注先でよく起きるトラブル
システム保守を外注したあと、「思っていた対応と違う」「連絡が遅い」「障害が繰り返し起きる」といった問題が起きることは珍しくありません。トラブルの種類によって対処法が異なるため、まず類型を整理します。
| トラブル種類 | 具体例 | 主な原因 |
|---|---|---|
| SLA違反 | 障害対応が稼働率保証を下回った | 契約上の数値目標が不明確 |
| 対応の遅延 | 障害報告後24時間以上音沙汰なし | 初動時間のSLA未設定 |
| 連絡不通 | 担当者に何度連絡しても返答なし | 体制不足・人材流出 |
| 品質低下 | 修正のたびに別の箇所が壊れる | ドキュメント不足・担当者交代 |
| 作業範囲の食い違い | 「それは保守範囲外」と言われた | 契約書の曖昧な文言 |
SLA違反が発生したときの対処手順
SLA(サービスレベル合意)とは、稼働率・障害対応時間・報告頻度などの目標値を定めた契約上の約束事です。SLAに違反があった場合、以下の手順で対処します。
ステップ1:違反の記録を残す
SLA違反を主張するには証拠が必要です。次の情報を記録・保存してください:
- 障害が発生した日時(ログ・ユーザーからの報告メール)
- 外注先に障害を報告した日時(メール・チケット番号)
- 外注先から初回応答が来た日時
- 復旧完了した日時
- 稼働率計算に必要な計画停止時間と実際の停止時間
ステップ2:契約書のSLA条項を確認する
契約書に記載されたSLA内容を確認します。確認すべき点は次の通りです:
- 稼働率保証の数値(例:月間99.9%など)
- 違反時のペナルティ内容(料金減額・損害賠償など)
- 免責条項(天災・第三者起因の障害は免責になる場合が多い)
- SLA測定の方法(計画停止を除外するかどうか)
注意が必要なのは、SLAを定めていても「ペナルティ規定がない」場合、SLAは努力目標に過ぎないと解釈されることがある点です(IT法務の実務上の論点)。ペナルティ規定がない場合でも、改善要求や契約解除の根拠として使えます。
ステップ3:書面で改善要求を送る
違反事実と改善要求を書面(メール可)で送ります。口頭での申し入れだけでは証拠になりません。書面には次の内容を含めてください:
- 違反の発生日時と内容(記録を基に具体的に)
- 契約書の該当条項
- 求める対応(再発防止策・ペナルティの適用・改善期限)
- 返答期限(例:2週間以内)
連絡不通・対応遅延が続く場合の対処法
担当者が返答しない、エスカレーションしても改善しない場合は段階的に対処します。
| 段階 | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| 1段階目 | 担当者へメール・電話で連絡(記録を残す) | まず当事者間で解決を試みる |
| 2段階目 | 外注先の上長・営業担当へエスカレーション | 組織として対応させる |
| 3段階目 | 内容証明郵便で改善要求を送付 | 法的な証拠力を持たせる |
| 4段階目 | 契約書に基づいて解約通告 | 関係を終了させる |
内容証明郵便は弁護士を通さなくても自分で送ることができます。ただし、損害賠償請求を視野に入れる場合はIT法務に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
「作業範囲外」と言われた場合の交渉法
「それは保守の範囲外です」という外注先の主張に対して、契約書を根拠に交渉する方法を解説します。
まず確認すべきは、契約書に「保守の対象範囲」が明記されているかどうかです。よくある落とし穴は次の通りです:
- 「障害対応」の定義があいまい:バグ修正のみか、仕様変更も含むかが不明確
- 「外部要因による障害」の扱い:OSアップデートやクラウドサービス側の障害が免責になっている
- 「保守対象のバージョン」の記載なし:古いバージョンのサポートが突然打ち切られる
これらの問題が見つかった場合は、契約更新のタイミングで条件を見直すことを提案します。契約更新前に「保守対象・免責範囲・対応時間・費用追加基準」を明確化した覚書を追加することが有効です。
契約解除・外注先切り替えの手順
問題が改善されない場合、契約解除と次の外注先への切り替えが必要になります。
契約解除の条件確認
契約書の解除条項を確認します。一般的な解除条件として以下が規定されていることが多いです:
- 相手方が契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正しない場合
- 相手方が解散・破産・業務停止になった場合
- 解約予告期間(1〜3ヶ月前通告が一般的)
切り替えに必要な引き継ぎ物の要求
旧外注先から以下の資料を受け取ることを要求してください。これらは本来、発注者(自社)が所有権を持つ資料です:
- システムのソースコード(著作権は契約書次第だが、受け取る権利があることを確認)
- インフラ構成図・ネットワーク図
- サーバー・クラウドのログイン情報・認証情報
- 設計書・テスト仕様書
- 変更履歴・インシデント記録
旧外注先が引き継ぎを拒否した場合、ソースコードの著作権条項やログイン情報の返還義務を根拠に法的対処が可能です(詳しくはIT法務専門の弁護士に相談)。
新しい外注先を選ぶときのチェックポイント
トラブル経験を活かして、次の外注先選びでは以下を確認してください:
- SLA・ペナルティ規定が契約書に明記されているか
- 障害時の初動対応時間(例:30分以内に連絡・4時間以内に対応開始など)が数値で設定されているか
- 月次レポートの提供があるか
- 担当者変更時の引き継ぎルールが明確か
- 解約時の引き継ぎ義務が契約書に盛り込まれているか
まとめ
- SLA違反は「記録→契約書確認→書面での改善要求」の手順で対処する
- 連絡不通・対応遅延は担当者→上長→内容証明→解約の段階で対処する
- 「範囲外」と言われたら契約書を確認し、書かれていない場合は交渉の余地がある
- 切り替え時はソースコード・インフラ情報・各種ドキュメントの返却を必ず要求する
- 次の外注先ではSLA数値・ペナルティ規定・解約時引き継ぎ義務を契約書に明記させる
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