- 自社開発したCRM(顧客管理システム)の保守を外部委託すべきかどうかの判断基準
- ベンダー契約切れ・担当エンジニア退職が起きたときに最初にやるべきこと
- 既存ベンダーからの情報引き継ぎで確保すべき資料とデータ
- CRM保守委託の費用目安(IPA基準による算出方法)
- 委託先を選ぶときにCRM特有で確認すべきポイント
自社開発したCRM(顧客管理システム)は、開発したベンダーとの契約が切れたり、社内で保守を担当していたエンジニアが退職したりしても、著作権とデータベースの所在さえ確保できていれば別の委託先に保守を引き継ぐことができます。放置すると顧客データの喪失やセキュリティリスクにつながるため、早めの対応が重要です。
CRMの保守委託とは何か
CRMの保守委託とは、自社で開発・運用してきた顧客管理システムの安定稼働・障害対応・セキュリティ更新を、開発元とは別の事業者に有償で任せることです。新規にCRMを導入する検討ではなく、すでに動いているCRMを「誰が守り続けるか」という運用フェーズの課題である点が特徴です。
これからCRMの新規導入や、SaaS型と自社開発のどちらを選ぶか検討している場合は、顧客管理システム(CRM)の導入ガイドで選び方・費用を解説していますのでそちらを参考にしてください。本記事は、すでに自社開発CRMが稼働している前提で、その保守を誰に委ねるかを整理します。
なぜ「CRMの保守委託」を検討することになるのか
CRMの保守委託が話題に上がるきっかけは、実務上おおむね3パターンに絞られます。
| きっかけ | 典型的な状況 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 開発ベンダーとの契約終了 | 受託開発会社との保守契約が満了し、更新しない・できない | 高(契約終了日が決まっている) |
| 担当エンジニアの退職・独立 | フリーランスや社内の1人担当者に依存していたCRMの管理者がいなくなる | 非常に高(引き継ぎ資料が薄いことが多い) |
| 保守品質への不満 | 「連絡が遅い」「障害対応が遅い」など既存委託先のパフォーマンス不足 | 中(切り替え時期を選べる) |
特に注意すべきは「担当エンジニアの退職・独立」です。CRMは顧客との商談履歴・連絡先・契約情報など事業の中核データを扱うため、引き継ぎが不十分なまま管理者不在の期間が生まれると、営業活動そのものが止まりかねません。
自社開発CRMは保守委託すべきか?判断基準は?
結論として、「CRMに事業の中核データが入っており、かつ現状の管理体制が1人または少人数に依存している」場合は、早期に外部の保守委託先を確保すべきです。判断の目安を以下にまとめます。
| 状況 | 保守委託の必要性 |
|---|---|
| 商談・顧客対応履歴がCRMに一元化されている | 高い(データ消失時の事業影響が大きい) |
| 管理者がベンダー1社・エンジニア1人に依存している | 高い(属人化リスクが高い) |
| 社内に保守できるIT担当者がいない | 高い(IT担当者不在の中小企業向け対策も参照) |
| 簡易的な顧客リスト管理のみで、他システムでも代替できる | 低い(Excel運用やSaaS移行で十分な場合もある) |
一般的なシステム保守とCRM保守委託は何が違うのか
CRMの保守委託には、一般的な業務システムの保守と比べて特有の論点があります。単なる「動作の維持」だけでなく、顧客の個人情報・商談データという機密性の高い情報を扱うことを前提に委託先を選ぶ必要があります。
- データの機密性:顧客の氏名・連絡先・取引内容が含まれるため、委託先の情報管理体制(アクセス権限の分離、通信の暗号化)を確認する必要があります。
- 外部連携の多さ:メール配信ツール、会計・請求システム、名刺管理ツールなど他システムとAPI連携しているケースが多く、連携部分の仕様書が引き継がれないと障害時の原因切り分けが難しくなります。
- カスタム項目の属人化:営業現場の要望で追加された独自の入力項目やレポート機能は、設計書に残っていないことが多く、旧担当者へのヒアリングが引き継ぎの成否を左右します。
- データ量の増加が速い:日々の商談記録が蓄積され続けるため、バックアップ・検索性能の劣化対策も保守範囲に含めて確認しておくべきです。
既存ベンダー・エンジニアからの引き継ぎはどう進めるのか
引き継ぎで最低限確保すべき4つの情報
CRMの場合、以下の4点は他のシステムよりも優先度を高く扱ってください。
- データベースへのアクセス権(発注者名義のクラウドアカウントであることが理想)
- 顧客データのエクスポート(バックアップ)(CSV等、他システムでも読める形式で最低1回取得)
- 外部連携の仕様書・APIキー(メール配信・請求システム等との連携情報)
- ソースコードとその著作権の帰属(契約書上、発注者に帰属していれば引き渡しを請求できる)
一般的な保守委託先の変更手順(依頼書の出し方、並行稼働期間の目安、旧ベンダーが協力しない場合の対処)はシステム保守の委託先を変える時の引き継ぎ手順で詳しく解説しています。CRMの場合はこれに加えて、顧客データのバックアップを引き継ぎ作業の最優先事項として扱ってください。データベースさえ確保できれば、設計書が多少不完全でも保守の再開は可能です。
また、契約時にベンダーロックインを防ぐ条項が入っていたかどうかも、引き継ぎの難易度を大きく左右します。次回の契約ではベンダーロックインを防ぐシステム保守契約の見直し方を参考に、著作権の帰属と引き継ぎ支援義務を明記しておきましょう。
CRM保守委託の費用目安はどれくらいか
CRMを含む業務システムの保守費用は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が示す「開発費の15〜20%が年間保守費用の目安」という基準が広く用いられています(IPA「情報システムの信頼性向上に関するガイドライン」)。CRMはこれに加えて、個人情報を扱う分のセキュリティ対応比率がやや高くなる傾向があります。
開発費規模別の年間保守費用の目安
| CRMの開発費規模 | 年間保守費用の目安 | 月額換算 |
|---|---|---|
| 300万円 | 45万〜60万円 | 3.8万〜5万円 |
| 500万円 | 75万〜100万円 | 6.3万〜8.3万円 |
| 1,000万円 | 150万〜200万円 | 12.5万〜16.7万円 |
これはあくまで目安であり、外部連携の数・データ量・対応時間帯(24時間監視の要否)によって変動します。保守費用の算出方法全般はシステム保守の費用相場と選び方で解説しています。
保守委託先を選ぶときに確認すべきポイントは何か
CRMの保守委託先を選ぶ際は、一般的なシステム保守の確認項目に加えて、以下のCRM特有の項目を必ず確認してください。
| 確認項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 個人情報の取り扱い体制 | 委託先内でのアクセス権限の分離、再委託の有無、秘密保持契約の締結 |
| データバックアップの頻度 | 日次バックアップの有無、復旧にかかる時間(RTO)の目安 |
| 外部連携の対応範囲 | メール配信・請求・名刺管理など既存連携先の仕様を理解できるか |
| 障害発生時の対応時間 | 営業時間中に顧客対応履歴が見られなくなった場合の初動時間 |
委託後に「本当に保守されているか」を継続的に確認する方法は保守委託後の品質確認方法で解説しています。契約して終わりにせず、月次レポートなどで運用状況を把握し続けることが、CRMのような事業の中核データを扱うシステムでは特に重要です。
まとめ
- 自社開発CRMは、著作権とデータベースの所在さえ確保できれば、開発元以外への保守委託が可能
- 「ベンダー契約切れ」「担当エンジニアの退職」が引き継ぎのきっかけになりやすく、特に後者は情報が薄くなりがちなため早期対応が必須
- 引き継ぎでは顧客データのバックアップ確保を最優先事項として扱う
- 費用目安はIPA基準(開発費の15〜20%/年)をベースに、個人情報対応の分をやや上乗せして見積もる
- 委託先選定では、一般的な保守の確認項目に加えて個人情報の取り扱い体制を必ず確認する
「保守してくれていたエンジニアが退職してしまった」「ベンダーとの契約が切れるが次が決まっていない」といった状況でも、現状のCRMを調査した上で保守を引き継ぐことが可能です。まずはお問い合わせから現状をお聞かせください。
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