記事一覧に戻る
システム開発

24/365監視は本当に必要?費用感と業務影響度で判断する保守体制の選び方

2026年4月25日 約7分で読めます
この記事でわかること
  • 「24/365監視」が必須なシステムと不要なシステムの判断基準
  • 監視レベル別(自動監視のみ/オンコール/有人24時間)の費用感
  • 業務影響度マトリクスを使った監視レベルの選定方法
  • 「下位プラン+オンコール」で24/365を代替する選択肢
  • クラウド時代の自動監視ツール活用で費用を半減させる方法
関連記事マップ(システム保守クラスター)

「24/365監視」が必須/不要の二極化している現状

保守見積もりを取ると、ほぼ確実に「24/365監視」のオプションが提示されます。月額10万円〜30万円の追加費用が発生する重い選択肢ですが、提案する側は「念のため」と勧めてくることが多く、発注者は「本当に必要なのか判断できない」というケースが頻発しています。

結論から言うと、24/365監視が必須なシステムは中小企業の保守対象のうち2〜3割程度です。残り7〜8割は「自動監視+営業時間内対応+必要時オンコール」の組み合わせで十分カバーできます。本記事では、その判断基準と具体的な費用感を整理します。

4つの監視レベルと費用感

「監視」と一言で言っても、実態は4段階に分かれています。

レベル監視内容対応体制月額目安
L1: 自動監視のみ死活監視・閾値アラートのみ営業時間内に確認1〜3万円
L2: 自動監視+オンコールL1+緊急時の電話/チャット待機営業時間外もアラート対応3〜10万円
L3: 有人監視(営業時間外も含む)担当者がアラートを能動確認夜間・休日も人が見る10〜30万円
L4: 完全24/365有人監視常駐エンジニアが画面監視365日24時間1名以上常駐50万円〜

世間一般に「24/365監視」と呼ばれるのはL3〜L4です。L4は金融機関・医療系など極めて高い可用性が求められるシステム向けで、中小企業の業務システムでは過剰なケースがほとんどです。

業務影響度マトリクスで判定する

適切な監視レベルは「業務停止が起きた場合の損失額」と「業務停止が許容される時間」の2軸で判定できます。

許容停止時間:1時間以内許容停止時間:4時間以内許容停止時間:24時間以内
停止時損失:100万円超/hL4(完全24/365)L3(有人監視)L3(有人監視)
停止時損失:10〜100万円/hL3(有人監視)L2(オンコール)L2(オンコール)
停止時損失:10万円未満/hL2(オンコール)L1(自動監視)L1(自動監視)

多くの中小企業の業務システムは「停止時損失10〜100万円/h × 許容停止4時間」のセルに該当し、L2(オンコール)で十分なケースが多いのが実態です。

「念のためL3にしましょう」と提案された場合、「停止時損失」と「許容停止時間」を数字で言語化してみてください。多くの場合、L2との差額(月額10〜20万円)が、実際のリスク低減効果に見合っていないことが分かります。

停止時損失の算出方法

「停止時損失」は以下の3要素を合算して算出します。

  1. 直接損失: 停止時間中の販売機会損失(ECなら時間売上、業務システムなら作業停止コスト)
  2. 間接損失: 顧客信頼の低下、SNS拡散リスク、解約・返金対応コスト
  3. 復旧コスト: 緊急対応の人件費、データ復旧費用、再発防止策の費用

例: 月商3,000万円のECサイトの場合、1時間あたり売上は約4万円(24時間換算)。土日深夜のCVRが平日の50%として2万円/h。これに間接損失(顧客信頼)と復旧コストを乗せると、停止時損失は5〜10万円/h程度。マトリクスで「10万円未満〜10〜100万円」の境界に位置します。

「下位プラン+オンコール」で24/365を代替する

L3(月額10〜30万円)が予算的に厳しい場合、L2のオンコール体制に「営業時間外の重大障害時のみ電話対応」を組み合わせることで、実質的にL3相当のリスクカバーが可能です。

項目L3(有人監視)L2+オンコール代替
月額固定費10〜30万円3〜10万円
夜間・休日の従量費—(含む)1回 3〜5万円(発生時のみ)
年間想定コスト(障害4回/年)120〜360万円48〜140万円
初動の遅さ5〜10分15〜30分

初動が15〜30分の遅延を許容できるなら、年間100〜200万円のコスト削減が可能です。保守コスト削減5選でもこの考え方を解説しています。

自動監視ツール活用で費用を半減する

有人監視に依存するL3〜L4は人件費が中心です。一方、L1〜L2は自動監視ツールの精度向上で実質的な監視品質を大きく上げられます。

監視ツール/サービスカバー範囲月額目安
Mackerel/Datadog/New Relicサーバー・APM・ログ統合監視1〜10万円
UptimeRobot/Pingdom外形監視(HTTP死活)無料〜1万円
AWS CloudWatch/GCP Cloud Monitoringクラウドリソース監視1〜3万円(従量)
Sentry/Bugsnagエラー監視・通知無料〜2万円
PagerDuty/Opsgenieオンコール通知ローテーション1〜3万円

これらを組み合わせれば、L1+L2の監視を月額5〜15万円で実現できます。クラウド前提のシステムならクラウド移行と保守費用の関係でも触れているとおり、CloudWatch等の標準監視で多くがカバーできます。

クラウド時代の24/365監視の考え方

クラウドネイティブなシステムでは、自動監視+自己回復(Auto Healing)を組み合わせることで、有人監視への依存度を大幅に下げられます。

自動回復の仕組み例

  • EC2 Auto Recovery: インスタンス障害時にAWS側が自動再起動
  • Auto Scaling Group: 異常インスタンスを自動置き換え
  • RDS Multi-AZ: DB障害時に自動でスタンバイへフェイルオーバー
  • Kubernetes: 異常Podの自動再起動

これらを適切に設計すれば、夜間障害の80%は人手なしで自動復旧します。「24/365有人監視」より「自動回復+オンコール(重大時のみ)」の方が、コスト効率も復旧スピードも優れるケースが多いのが実態です。

中小企業向けの推奨パターン

システム特性推奨レベル月額目安
社内業務システム(営業時間中心の利用)L1+営業時間内対応5〜10万円
BtoB Webサービス(24時間アクセスあり)L2+オンコール10〜20万円
BtoC EC・予約サービス(夜間休日に売上)L2+夜間オンコール15〜30万円
金融・決済系(停止時損失が極大)L3+L4ハイブリッド50万円〜
医療・公共系(停止が許容されない)L4(24/365有人)100万円〜

多くの中小企業の保守は「L2+オンコール」で十分カバーできます。「念のための24/365」を選ぶ前に、自社システムの停止時損失を一度数字で出してみてください。

監視レベルを選ぶときの3つのチェックポイント

1. アラートの設定が適切か

L3〜L4の有人監視を入れても、アラート設定が雑だと「狼少年化」して反応しなくなります。重要度別のアラート分類(Critical/Warning/Info)と、Critical時のみ電話通知などのフィルタリングが必須です。

2. 復旧手順書(Runbook)が整備されているか

夜間に誰かがアラートを受けても、復旧手順書がないと対応できません。「アラート種別ごとの初動手順」を明文化することで、L1+オンコールでも実質的にL3相当のスピードを実現できます。

3. 監視ベンダーと開発ベンダーが分かれていないか

監視会社と開発会社を分けると、障害時の責任所在が曖昧になり、初動が遅れます。中小企業では「保守=開発した会社が監視も担当」のシンプルな構造が安全です。保守会社の比較サンプルでも触れています。

「24/365監視がないと夜間障害が怖い」という発注者の不安はもっともです。しかし実際には、自動監視+自動回復+オンコールの組み合わせで、夜間の障害の8割は自動的に復旧し、残り2割もオンコールで30分以内に対応開始できます。「念のため」のコストを払う前に、本当に必要な監視レベルを数字で見極めてください。

関連記事

まとめ

24/365監視は「あったほうがいい」のは間違いありませんが、中小企業の業務システムで本当に必要なケースは2〜3割程度です。

  • 監視には4レベル(L1〜L4)あり、L2(自動監視+オンコール)が中小企業の標準
  • 停止時損失と許容停止時間の2軸マトリクスで適切なレベルを判定する
  • L3を選ぶ前に「下位プラン+オンコール」で代替できないか検討する
  • クラウドの自動回復機能を活用すれば、有人監視への依存度を下げられる

「現在の保守プランで監視レベルが過剰/不足ではないか」のセカンドオピニオンも承っています。お問い合わせからどうぞ。FUNBREWの保守サービスでは業務影響度に応じた最適な監視レベルをご提案しています。

よくある質問
24/365監視はうちの会社にも必要ですか?
業務影響度で判断します。サービス停止が直接的な売上損失や顧客への重大影響につながる場合(EC・決済・医療)はL3有人監視が必要です。一方、社内業務システムや夜間アクセスがほぼないシステムであれば、L2(自動監視+オンコール)で十分なケースが大半です。目安として、中小企業の保守対象システムのうち24/365監視が必要なのは2〜3割程度です。
L3(有人監視)とL2+オンコールの最大の違いは何ですか?
初動対応の速さです。L3有人監視は異常検知から5〜15分以内に人が対応を開始しますが、L2オンコールは担当者への連絡・起床・確認に30〜60分かかる場合があります。費用差は月額10〜30万円程度で、この時間的差異に見合うコストかどうかが判断のポイントです。
自動監視ツールだけで本当に大丈夫ですか?
設定次第で多くのシステムはL1〜L2(自動監視中心)で対応できます。CloudWatch・Datadogなどの自動回復機能を活用すれば、サーバー再起動や負荷分散は人手なしで対処可能です。ただし「障害の文脈判断」や「顧客・ベンダーへの連絡判断」は人が必要なため、完全無人では対応しきれない場面があります。
クラウド時代でも24/365有人監視は必要ですか?
クラウド移行後は自動復旧機能の充実により、L3有人監視が必要なケースは減っています。AWSやAzureのマネージドサービスを活用すれば、インフラ障害の多くは自動で回復します。ただし、アプリケーション層の障害・設定ミスによる異常系は自動対応できないため、夜間オンコール体制は引き続き必要です。
監視レベルを下げて費用を削減するときのリスクは?
最大のリスクは「障害検知の遅延による被害拡大」です。L3からL2に変更した場合、夜間障害の対応開始が30〜60分遅れる可能性があります。削減額と障害時の損失額(売上・顧客影響・対応コスト)を比較して判断してください。段階的なダウングレードとして、まず「夜間はL2、日中はL3」のハイブリッド体制から試すのが安全です。
24時間監視の外注費用の相場はどのくらいですか?
監視レベルによって大きく異なります。L1(死活監視のみ・自動)は月額3〜10万円、L2(自動+オンコール対応)は月額10〜30万円、L3(24時間有人監視)は月額30〜80万円が目安です。クラウド管理を含む包括保守契約では、これらに加えてサーバー費・ライセンス費が別途かかるケースもあります。
複数のシステムをまとめて監視依頼することはできますか?
複数システムをまとめて依頼する場合、単体契約より10〜20%のコスト削減が見込めます。ただし、各システムで監視要件(対応時間・エスカレーション先・SLA水準)が異なる場合は個別設定が必要です。まず主要システム1つで試験導入し、運用実績を確認してから他システムへ横展開する進め方が安全です。
監視会社を選ぶときに確認すべきポイントは?
確認すべき5点は①対応可能な監視レベル(L1〜L3)、②障害検知から初動までの所要時間のSLA定義、③エスカレーション手順と連絡先の明確さ、④月次報告書の提供有無、⑤契約解除・変更の柔軟さ(12か月縛りか月次解約か)です。見積もり取得時は「監視項目の一覧」と「SLA違反時の補償条件」を必ず確認してください。

現在の監視レベルが適正か確認したい方へ

30分の無料相談で、停止時損失とSLAから最適な監視レベルをご提案します。

この記事をシェア

保守の監視レベル見直しのご相談

セカンドオピニオンも承ります。現状の保守プランの妥当性を客観的に評価します。

最新情報をお届けします

IT活用のヒントやお役立ち情報を定期的にお届けします。

あわせて読みたい

「システム保守・運用」に関連する記事です。

まとめ記事

システム保守の費用相場と選び方|"守り"だけで終わらない攻めの保守運用ガイド【2026年版】

ベンダーロックインを防ぐシステム保守契約の見直し方|発注者が契約前に確認すべき6つのポイント

2026年6月11日

システム保守に必要なドキュメント一覧と整備方法|発注者が揃えておくべき資料と管理のコツ

2026年6月9日

社内にIT担当者がいない場合のシステム保守|中小企業が取るべき3つの対策と外注活用ガイド

2026年5月31日

システム保守契約の更新・見直しガイド|更新タイミング・比較チェックリスト・乗り換え手順

2026年5月27日

システム保守の定期点検チェックリスト|月次・四半期・年次で確認すべき15項目

2026年5月26日

システム保守の月次報告書の読み方と確認ポイント|発注者が見るべき5つの数字

2026年5月22日

システム障害が起きたら発注者はどう動く?保守委託先へのエスカレーション手順と確認ポイント

2026年5月20日

保守委託後の品質確認方法|「本当に保守されているか」を発注者が確かめる5つのポイント

2026年5月18日

システム保守費用を下げる交渉術|見積もりの高い理由と発注者が使える5つの値下げ交渉法

2026年5月9日

VSCode SSH接続できない・使えなくなった時の解決方法【Windows/Mac対応】

2026年5月6日

クラウド移行で保守費用はどう変わる?AWS・GCP・Azureとオンプレ保守の費用構造比較

2026年4月25日

サーバー保守の料金相場と費用内訳|月額・年額・作業別に徹底解説【2026年版】

2026年4月16日

システム保守費用の計算方法|IPA基準15〜20%の根拠と業種別相場一覧

2026年4月14日

システム保守のコスト削減方法5選|品質を落とさず費用を最適化するコツ

2026年4月10日

システム保守の契約形態を比較|月額固定・従量制・ハイブリッドの違いと選び方

2026年4月10日

月額10万円からの保守サービスで何ができるか?FUNBREWのプラン解説

2026年4月9日

Laravel・WordPressの保守で気をつけるべきバージョン管理|EOL対応とアップデート戦略

2026年4月9日

システム保守と運用の違いとは?中小企業が知るべき基礎知識と外注のコツ

2026年4月9日

セキュリティアップデートを放置するとどうなる?実際の被害事例と今すぐできる対策

2026年4月9日

保守契約の落とし穴|「何もしてくれない」を防ぐ7つのチェックリスト

2026年4月9日

保守費用を開発投資に変える|「充填型保守」の仕組みと実例で見る投資対効果【2026年版】

2026年4月9日
まとめ記事

システム保守の費用相場と選び方|"守り"だけで終わらない攻めの保守運用ガイド【2026年版】

2026年3月1日

関連記事

開発
2026年6月11日

ベンダーロックインを防ぐシステム保守契約の見直し方|発注者が契約前に確認すべき6つのポイント

ベンダーロックインは保守契約を結んだ瞬間から始まります。ソースコードの権利・データポータビリティ・移行支援条項など、発注者が契約前に確認すべき6つのポイントを具体的な交渉例とともに解説します。

開発
2026年6月9日

システム保守に必要なドキュメント一覧と整備方法|発注者が揃えておくべき資料と管理のコツ

システム保守で困らないために発注者側が揃えるべきドキュメントを解説。仕様書・設計書・運用手順書など11種類の資料と整備の優先順位、管理ルールの作り方がわかります。

システム保守
2026年5月31日

社内にIT担当者がいない場合のシステム保守|中小企業が取るべき3つの対策と外注活用ガイド

「エンジニアが退職した」「もともとIT専任者がいない」中小企業向けに、システム保守の現実的な対処法を解説。外注・ベンダー任せ・SaaS移行の3つのアプローチと、各判断基準をわかりやすくまとめました。

開発
2026年5月27日

システム保守契約の更新・見直しガイド|更新タイミング・比較チェックリスト・乗り換え手順

システム保守契約の更新時期に何を確認すべきか、乗り換えの判断基準と手順を発注者向けに解説。契約満了の3〜6ヶ月前から動くべき理由と、比較・交渉のポイントをチェックリスト付きで紹介します。

相談のハードル、下げました

まずは気軽にご相談ください

「まだ具体的に決まっていない」「とりあえず話を聞きたい」でも大丈夫。プロトタイプを見ながら、一緒にアイデアを形にしていきましょう。

相談無料 オンライン対応 1週間でプロトタイプ