AIを使っても開発費は安くなりません。安くなるのは開発工程までで、保守・運用やセキュリティ、規模の大きい領域では効きません。代わりに変わったのは品質です。数十万円規模の案件でもテストを全部書けるようになりました。
「AIを使っているなら、その分安くなりますよね」。開発の相談で実際に聞かれる質問です。この記事は、FUNBREWが自分たちの現場でAIをどこまで使っているか、それが発注する側に何を返しているのかを、正直に書いたものです。宣伝として「AIで安く早く」と言うつもりはありません。むしろ、安くなる部分と、ならない部分の線をはっきりさせることが、発注側にとっていちばん役に立つと考えています。
開発現場でAIをどこまで使っているのか
結論から言えば、コーディングからサーバーの調査、ドキュメントの作成まで、あらゆる工程で使っています。特定の作業だけに限定して使っているわけではありません。
いちばん効いているのは、引き継ぎ案件の調査
他社が作ったシステムを引き継ぐとき、開発者は当時の開発者・開発会社・使われていた技術・そのときの顧客の状況までを想像しながら調査する必要があります。細部から入るのではなく、全体像の把握から入ることが多い仕事です。
ここで難しいのは、顧客自身も全体像をうまく説明できないことがままあるという点です。長く使われてきたシステムほど、経緯を知る人が社内に残っていません。そこで、AIで軽く調査して仮説を立てたうえで、「実は当時、こういう事件があったのではないですか」と顧客に聞いてみます。すると、顧客側にも記憶が戻り、会話をしながらプロジェクトの輪郭が見えてくる——という進め方をしています。
引き継ぎ調査の最難関は技術ではなく、「その機能が何のために使われているか」という業務側の理解で、これは聞かないと分かりません。AIは、その質問を作るところで効いています。実際の調査で何を見て判断しているかは手を入れるより作り直した方が早いと判断するとき、顧客側から何が出てくるかはシステム引き継ぎで用意する資料は何かに書いています。
人の手が残っているところ
AIを使っても、人の手が必要な仕事は多く残っています。顧客の業務のヒアリング、日本固有の事情の考慮といった部分です。
ここで起きた変化は「その仕事もAIに任せられるようになった」ではありません。コーディングなどの作業が早くなった分を、顧客とのやりとりに充てられるようになった、という変化です。時間の再配分であって、代替ではない、というのが実感に近い説明です。
AIを使うと開発費は安くなるのか
率直に言えば、安くなるのは開発工程までです。ここから先は、ほとんど効きません。
安くならない領域
- 保守・運用 —— 動き続けるものを見守る仕事は、書く速度が上がっても総量が減りません。
- セキュリティ —— 想定外の使われ方を洗い出す作業は、人が把握しておく必要が残ります。
- 規模が大きくなったとき —— システム全体の整合性を保つ部分が難所になります。
規模が大きくなると何が起きるか
AIを使って自分たちで作ってみる、という選択肢は、以前より現実的になりました。小さく作って動かすところまでは、実際に到達できます。難しくなるのはその先で、機能が増えるほど全体の整合性が合わなくなり、直しては壊れるという往復が起きやすくなります。どこを直すと何に影響するかを見通す部分は経験が要る領域で、開発会社の側に分があるのはここです。
これは「だから開発会社に頼むべき」という話ではありません。どこまでは自分たちでやれて、どこから難しくなるのかという線を知っておくと、外注する範囲を賢く決められます。
本当に変わったのは、費用ではなく品質
費用が下がらないのなら、何が変わったのか。品質は大きく向上したと自信を持って言えます。
数十万円の案件でも、テストを全部書けるようになった
従来、小規模な案件ではテストコードを書く工数が予算に収まらず、手動確認で済ませる判断をせざるを得ない場面がありました。現在は、数十万円規模の案件であってもテストを全部書けます。発注する側から見た利益は、値引きではなくこちらです。納品後に想定外の壊れ方をする確率が下がる、という形で返ってきます。
品質と責任は、どこで担保しているか
| 観点 | 判断基準 |
|---|---|
| 品質 | 顧客に見せて、実際に使えるかどうか |
| 責任 | セキュリティ部分のテストカバレッジと、想定外の使われ方をされないかを、人間の側でも把握しておくこと |
AIが出したものをそのまま納品する、ということはありません。特に責任の面では、最終的に人が把握していることが条件になります。
「AI活用」を謳う会社を、発注側はどう見ればよいか
これから発注先を選ぶ方に向けて、ひとつだけ視点をお伝えします。AIを使っていること自体は、もう差別化の材料になりません。
見るべきは「AIを使っているか」ではなく「何を解決するか」
現在は汎用のAIモデルで多くのことができるため、少し知識があれば「AIを使った製品」というだけでは特別なことをしている証明になりません。開発会社がAIを使っているのは今後の主流であり、当たり前の状態に近づいています。
したがって、提案を評価するときは「AIを活用しています」という言葉ではなく、自社のどの課題が、どう解決されるのかで見てください。相談の段階で何を伝えると話が早いかは、開発の相談メールに何を書けば話が早いかにまとめています。
まとめ
FUNBREWでは、コーディング、サーバー調査、ドキュメント作成まであらゆる工程でAIを使っています。特に引き継ぎ案件では、軽く調査して仮説を立て、それを顧客にぶつけて記憶を引き出すという使い方が効いています。
一方で、AIを使っても費用は安くなりません。安くなるのは開発工程までで、保守・運用やセキュリティ、規模の大きい領域には効きません。代わりに品質が上がり、数十万円規模の案件でもテストを全部書けるようになりました。発注する側にとっての利益は、値引きではなく、納品後の壊れにくさです。
どこまでを自社でやり、どこから任せるか。その線引きの相談からお受けしています。お問い合わせよりご連絡ください。
この記事をシェア