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システム開発

SLA(サービスレベル契約)の決め方|システム運用保守で押さえるべき指標と条項

2026年3月9日 約6分で読めます
この記事でわかること
  • SLA(サービスレベル契約)の基本概念と必要性
  • SLAで定めるべき指標(SLI)の種類と設定方法
  • 稼働率の計算方法と現実的な目標値
  • SLA違反時のペナルティ・補償条項の設計
  • 運用保守契約へのSLA盛り込み方と交渉ポイント

SLAとは何か — なぜ必要なのか

SLA(Service Level Agreement)は、システムやサービスの提供者と利用者の間で「どのレベルのサービスを保証するか」を定めた合意文書です。日本語では「サービスレベル契約」や「サービス品質保証」と呼ばれます。

SLAがないと何が起きるか。たとえば、社内システムが停止したときに「いつまでに復旧するのか」を巡って揉めます。発注者は「すぐ直してほしい」と思い、受注者は「契約にない対応はできない」と返す。この認識のズレがトラブルの原因になります。

SLAは、こうした「暗黙の期待」を数値で明文化し、サービス品質を保証する仕組みです。

SLAが特に重要なケース

  • 基幹システムの運用保守 — 停止すると業務が止まるため、復旧時間の保証が必須
  • ECサイト・Webサービス — ダウンタイムが直接的な売上損失になる
  • SaaS・クラウドサービスの利用 — AWS、Azure等のクラウドもSLAを提供している
  • 外部ベンダーへの運用委託 — 委託先のサービス品質を契約で担保する

SLAの構成要素 — SLI・SLO・SLA

SLAを正しく設計するには、3つの概念を理解する必要があります。

用語正式名称意味
SLIService Level Indicatorサービス品質を測る指標稼働率、レスポンスタイム、エラー率
SLOService Level ObjectiveSLIの目標値(社内目標)稼働率99.95%を目指す
SLAService Level AgreementSLOを対外的に約束した契約稼働率99.9%を保証する

ポイントは、SLO(社内目標)はSLA(契約上の保証値)より高く設定することです。SLAギリギリで運用していると、少しのトラブルで契約違反になってしまいます。

SLAで定めるべき主要指標

①稼働率(Availability)

最も基本的なSLA指標です。「月間でシステムが正常に稼働している時間の割合」を示します。

計算方法

稼働率 = (総時間 − ダウンタイム)÷ 総時間 × 100%

稼働率の数字は、0.1%の違いが大きなインパクトを持ちます。

稼働率月間許容ダウンタイム年間許容ダウンタイム一般的な用途
99.0%約7.3時間約3.7日社内ツール、開発環境
99.5%約3.6時間約1.8日一般的な業務システム
99.9%(スリーナイン)約43分約8.8時間ECサイト、基幹システム
99.95%約22分約4.4時間重要なWebサービス
99.99%(フォーナイン)約4.3分約53分金融・医療システム

中小企業のシステムであれば、99.5〜99.9%が現実的な目標値です。99.99%以上を求めると、冗長構成や24時間監視体制が必要になり、コストが大幅に跳ね上がります。

②応答時間(Response Time)

障害やインシデントが発生してから、運用チームが「対応を開始する」までの時間です。復旧完了までの時間ではなく、「認知して着手する」までの時間である点に注意してください。

重要度定義応答時間の目安
緊急(P1)システム全体が停止15分〜1時間
重大(P2)主要機能が利用不可1〜4時間
通常(P3)一部機能に不具合4時間〜翌営業日
軽微(P4)UXの問題、要望翌営業日〜3営業日

③復旧時間(MTTR)

MTTR(Mean Time To Recovery)は、障害が発生してから正常な状態に復旧するまでの平均時間です。応答時間とは異なり、「完全に直るまで」の時間です。

  • P1障害の復旧目標:4時間以内
  • P2障害の復旧目標:8時間〜翌営業日
  • 完全復旧が困難な場合は、暫定対応(ワークアラウンド)の提供時間を別途定める

④対応時間帯

運用保守の対応時間帯は、コストに直結する重要な要素です。

  • 24時間365日 — ECサイト、SaaSなど停止が許されないサービス向け。コスト高
  • 平日9:00〜18:00 — 一般的な社内システム向け。最もコスト効率が良い
  • 平日9:00〜21:00 — 夜間の利用もある場合の折衷案
  • 営業時間外はアラート監視のみ — P1障害だけ夜間対応する方式

⑤その他の指標

  • バックアップ頻度 — 日次/週次/リアルタイム。RPO(Recovery Point Objective)として定義
  • レスポンスタイム — Webページの表示速度(95パーセンタイルで3秒以内、等)
  • データ保全 — バックアップの保持期間、リストア手順の確認頻度
  • 月次レポート — SLI実績の報告頻度と内容
運用保守の現場からひとこと
「SLAの数値は高ければ良いというものではありません。99.99%の稼働率を保証するには、99.9%の10倍以上のコストがかかることも珍しくありません。ビジネスへの影響度とコストのバランスで判断しましょう。『このシステムが1時間止まったら、いくらの損失が出るか?』を計算すると、適切なSLAレベルが見えてきます。」

SLA違反時のペナルティ条項

SLAは「約束」なので、守れなかった場合の取り扱いを定める必要があります。

ペナルティの種類

  • サービスクレジット — SLA未達の度合いに応じて、翌月の利用料から割引。クラウドサービスで一般的
  • 減額・返金 — 月額保守費用の一部を減額。運用保守契約で一般的
  • 契約解除権 — 重大なSLA違反が繰り返された場合に発注者が契約を解除できる条項

サービスクレジットの設計例

月間稼働率サービスクレジット
99.9%以上なし(SLA達成)
99.0〜99.9%月額費用の10%
95.0〜99.0%月額費用の25%
95.0%未満月額費用の50%

免責事項(SLA除外)

以下のケースは一般的にSLAの計算対象外とします。

  • 計画メンテナンス(事前に通知されたもの)
  • 発注者の責に帰すべき事由(操作ミス、未承認の変更等)
  • 不可抗力(天災、大規模停電等)
  • 第三者サービスの障害(クラウド基盤自体の障害等)

運用保守契約へのSLA盛り込み方

契約書の構成

SLAは運用保守契約の本体に含めるか、別紙として添付するのが一般的です。

  1. 契約本体 — 委託範囲、期間、報酬、解約条件など基本事項
  2. 別紙1:SLA — SLI・目標値・ペナルティ条項・免責事項
  3. 別紙2:運用手順書 — 障害対応フロー、エスカレーションルール、連絡体制

交渉のポイント

  • 数値の根拠を共有する — 「99.9%にしたい」だけでなく、「月43分以上止まると○万円の損失」と具体的に説明
  • 段階的に引き上げる — 初年度は99.5%、2年目から99.9%のように段階設定も有効
  • 測定方法を合意する — どのツールで、何を基準に稼働率を測定するか
  • レポーティングの頻度 — 月次レポートでSLI実績を共有し、問題を早期発見
  • 見直し条項 — 年1回のSLA見直し協議の場を設ける

主要クラウドサービスのSLA比較

自社でSLAを設計する際の参考として、大手クラウドのSLAを見てみましょう。

サービス稼働率保証サービスクレジット
AWS EC299.99%稼働率99.0%未満で30%クレジット
Azure Virtual Machines99.99%(可用性ゾーン利用時)稼働率99.0%未満で25%クレジット
Google Cloud Compute99.99%稼働率99.0%未満で25%クレジット
Salesforce99.9%非公開(個別交渉)

自社が利用するクラウドのSLAを超える保証を約束することはできません。たとえば、AWSの上で動くシステムで99.999%のSLAを保証するのは、基盤自体が99.99%保証のため原理的に困難です。

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まとめ

  • SLAはサービス品質の「数値化された約束」。暗黙の期待を明文化しトラブルを防ぐ
  • 稼働率は0.1%の差が大きい。99.9%と99.99%ではコストが桁違いに変わる
  • 応答時間と復旧時間は分けて定義。「対応開始」と「完全復旧」は別の指標
  • ペナルティはサービスクレジットが一般的。段階的な設計でリスクを適切に配分
  • 免責事項を明確に。計画メンテナンス・不可抗力・第三者起因はSLA対象外とする
  • 年1回の見直し。ビジネス環境やシステム構成の変化に合わせてSLAも更新する

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よくある質問
システム開発の契約で注意すべきポイントは?
成果物の定義、検収条件、瑕疵担保(契約不適合責任)の範囲と期間、知的財産権の帰属を明確にすることが重要です。口頭の合意ではなく、必ず書面で取り決めましょう。
請負契約と準委任契約、どちらを選ぶべき?
完成物が明確に定義できる場合は請負契約、要件が流動的な場合やアジャイル開発には準委任契約が適しています。工程ごとに契約形態を変える「多段階契約」も有効な選択肢です。
開発途中でトラブルが起きた場合の対処法は?
まずは契約書の紛争解決条項を確認しましょう。多くの場合、協議→調停→裁判の流れです。トラブルを防ぐためには、定期的な進捗報告と議事録の作成を契約時に取り決めておくことが重要です。

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