突然の連絡不能。そのとき何が起きるか
「開発を依頼していた会社と連絡が取れなくなった」「開発会社が倒産した」——このような事態は、残念ながら珍しくありません。特に小規模な開発会社やフリーランスに依頼していた場合、ある日突然、システムの面倒を見る人がいなくなるリスクがあります。
このとき最も困るのは、システムが動いているのに誰もメンテナンスできない状態になることです。セキュリティパッチが当たらない、障害が起きても復旧できない、サーバーの契約更新ができない(保守の費用相場と重要性を理解しておくと、次の一手が見えやすくなります)——放置すれば、ビジネスに直結する被害が広がります。
最初の72時間でやるべきこと
ステップ1: サーバー・ドメインのアクセス権を確認する
最優先はインフラへのアクセス確保です。以下を確認してください。
- サーバー(AWS、さくら、Xserver等)のログイン情報は自社で保有しているか
- ドメインの管理権限(レジストラのアカウント)は自社名義か
- SSL証明書の有効期限と更新手段
- メールサーバーの管理権限
開発会社名義で契約されている場合、倒産後にアクセスできなくなる可能性があります。契約元(AWSやさくらインターネット等)に事情を説明し、名義変更の手続きを早急に進めてください。なお、ドメインの移管には数日〜数週間かかるケースもあるため、期限切れ前に動き出すことが重要です。
ステップ2: ソースコードを確保する
ソースコードの所在を確認します。主に以下のパターンがあります。
| 保管場所 | 対応方法 |
|---|---|
| GitHubなど自社アカウントのリポジトリ | すぐにアクセスし、最新状態を確認 |
| 開発会社のリポジトリ | アカウント失効前にフォーク・クローン |
| サーバー上にのみ存在 | サーバーからダウンロードしてバージョン管理に登録 |
| 所在不明 | サーバー上のファイルから復元を試みる |
ソースコードが開発会社のGitHubアカウントにしかない場合、アカウントが削除される前にフォークまたはクローンを行う必要があります。GitHubの場合、有料プランの支払いが停止するとプライベートリポジトリにアクセスできなくなる可能性があるため、一刻も早い対応が求められます。
ステップ3: 現状のシステム構成を把握する
ドキュメントが残っていない場合でも、サーバー上のファイルやデータベースから以下を調査できます。
- 使用フレームワーク・言語・バージョン
- データベースの種類とテーブル構成
- 外部サービスとの連携(API、決済、メール配信等)
- 定期実行されているバッチ処理(cronジョブ)
- バックアップの有無と方法
特に見落としやすいのが、cronジョブや外部APIとの連携です。メール配信サービスや決済サービスのAPIキーが開発会社のアカウントに紐づいている場合、それらも自社に移管する必要があります。
緊急保守体制を構築する
新しい保守パートナーに伝えるべき情報
新しい保守会社を選定する際には、以下の情報を整理して提供することで、スムーズな引き継ぎが可能になります。
- システムの目的と主要な機能
- 利用ユーザー数と重要な業務フロー
- 直近で発生した障害やトラブルの履歴
- 残っているドキュメント(あれば)
- 現在判明している問題点や不具合
保守パートナー選定のポイント
緊急時の保守パートナー選びでは、以下を重視してください。
- 他社システムの引き継ぎ実績があること
- 使用されている技術スタック(言語・フレームワーク)に対応できること
- 初期の調査・解析フェーズを明確に提案してくれること
- 緊急時の障害対応体制が整っていること
「すぐに全部直します」という業者より、「まず調査させてください」と言ってくれる業者のほうが信頼できます。ドキュメントのないシステムを理解するには時間が必要であり(内製と外注の判断を含め)、それを正直に伝えてくれるパートナーを選びましょう。
引き継ぎ期間の目安
ドキュメントが整備されていないシステムの場合、新しい保守会社がシステムを理解するのに通常1〜3ヶ月かかります。この期間は「調査・理解フェーズ」として、通常の保守業務に加えてシステム解析の工数が発生します。
この調査期間を短縮するには、以下が有効です。
- 元の開発メンバーへのヒアリング(連絡が取れる場合)
- 利用者へのヒアリングによる業務フローの把握
- テスト環境の構築と動作検証
再発を防ぐための契約上の対策
開発契約時に盛り込むべき条項
同じ事態を繰り返さないために、開発契約・保守契約には以下を明記しておくべきです。
- ソースコードの所有権: 納品物の著作権・所有権が発注者に帰属すること
- リポジトリへのアクセス: 自社アカウントのリポジトリでソースコードを管理すること
- インフラの名義: サーバー・ドメインは自社名義で契約すること
- ドキュメント納品: システム構成図、データベース設計書、運用手順書の納品を義務付けること
- 引き継ぎ条項: 契約終了時の引き継ぎ期間と協力義務を定めること(保守契約の落とし穴チェックリストも参考にしてください)
まとめ
- 最初の72時間でサーバー・ドメインのアクセス権とソースコードを確保する
- 新しい保守パートナーには、システムの目的・構成・課題を整理して伝える
- ドキュメントがないシステムの引き継ぎには1〜3ヶ月の調査期間が必要
- 再発防止のため、契約にソースコード所有権・インフラ名義・引き継ぎ条項を盛り込む
FUNBREWの保守サービスは、緊急の引き継ぎにも対応しています。お問い合わせからご連絡ください。
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