- BtoB ECとBtoC ECの根本的な違い
- BtoB ECサイトに必要な機能一覧
- 掛け売り・与信管理の仕組みと対応方法
- 基幹システム(ERP・在庫管理)との連携
- BtoB EC構築プラットフォームの比較と選び方
BtoB ECが注目される背景
BtoB(企業間取引)のEC化率は年々上昇しています。経済産業省の調査によると、BtoB ECの市場規模は約465兆円(2024年)で、EC化率は約40%に達しています。
これまでBtoB取引は、電話・FAX・メールでの受発注が主流でした。しかし、以下の理由からEC化への移行が加速しています。
- 人手不足 — 営業・受注担当者の採用が困難。受注業務の自動化が急務
- 顧客側のニーズ変化 — バイヤーもオンラインでの発注を好むようになった
- 業務効率化 — 電話・FAX受注の転記ミス、在庫確認の手間を削減
- データ活用 — 取引データの蓄積・分析による営業力強化
ただし、BtoB ECはBtoC ECとは求められる機能が大きく異なります。BtoCの仕組みをそのまま適用すると、現場で使えないシステムになりがちです。
BtoB ECとBtoC ECの違い
BtoB ECの構築を検討する際、まず理解すべきはBtoCとの根本的な違いです。
| 項目 | BtoC EC | BtoB EC |
|---|---|---|
| 購入者 | 個人(エンドユーザー) | 法人(担当者+承認者) |
| 価格設定 | 全員同一価格 | 取引先ごとに異なる(掛け率・個別単価) |
| 決済方法 | クレカ・QR・後払い等 | 掛け売り(月末締め翌月払い等)が主流 |
| 注文単位 | 1個〜 | ロット単位・ケース単位が多い |
| 購入の意思決定 | 個人が即決 | 担当者→上長承認→発注の多段階 |
| リピート率 | 商品による(数%〜30%) | 非常に高い(定期的な再発注) |
| カタログ・商品数 | 数十〜数千点 | 数千〜数万点(型番・規格違い含む) |
| 基幹連携 | あれば便利 | 必須(在庫・会計・出荷) |
この違いを踏まえず「Shopifyで十分」と判断すると、掛け売りや会員別価格に対応できず、結局は手作業が残ってしまいます。
BtoB ECサイトに必要な機能
会員管理・取引先管理
- 法人アカウント管理 — 1社に複数ユーザー(購入担当・承認者・管理者)を紐付け
- 承認ワークフロー — 担当者が注文→上長が承認→発注確定の流れ
- 取引先ランク — ゴールド・シルバー等のランクに応じた掛け率や送料条件の設定
- 閲覧制限 — 取引先によって見える商品・見えない商品を制御
価格・掛け率管理
- 会員別価格 — 取引先ごとに異なる販売価格を設定
- 数量割引 — ロット数に応じた段階的な値引き
- 見積もり機能 — オンラインで見積もり依頼→見積書発行→注文の流れ
- 掛け率テーブル — 商品カテゴリ × 取引先ランクの掛け率マトリクス
受注・決済
- 掛け売り(後払い) — 月末締め翌月末払い等。与信管理が必須
- 請求書払い — 注文ごとではなく月次でまとめて請求
- 発注書出力 — 社内稟議用の帳票出力
- 定期注文(リピートオーダー) — 毎月同じ商品を自動発注する機能
- クイックオーダー — 型番を直接入力して大量の商品をまとめて注文
基幹システム連携
- 在庫管理連携 — リアルタイムの在庫数をEC上に反映
- 会計システム連携 — 売上・請求データを自動連携
- 出荷管理連携 — 受注→出荷指示→配送状況の一気通貫
- 顧客管理(CRM)連携 — 営業活動データとEC購買データの統合
掛け売り・与信管理の仕組み
BtoB ECの最大の特徴が「掛け売り」です。BtoCのように注文時に即時決済するのではなく、月単位でまとめて請求・支払いする商慣習です。
掛け売りの基本フロー
- 取引先が商品を注文
- 商品を納品(この時点で売掛金が発生)
- 月末に締め処理(当月分の注文をまとめる)
- 請求書を発行・送付
- 翌月末(または翌々月末)に入金
与信管理が必要な理由
掛け売りは「後から払ってもらう」仕組みのため、未回収リスクがあります。与信管理とは、取引先ごとに「いくらまで掛け売りを認めるか」の上限(与信限度額)を設定・管理することです。
- 自社で与信管理 — 帝国データバンク・東京商工リサーチの企業情報を基に与信枠を設定。管理の手間はかかるが柔軟性が高い
- BtoB決済サービスを利用 — Paid(ラクーンフィナンシャル)、NP掛け払い、マネーフォワード ケッサイ等。与信審査から請求・回収まで代行してくれる
主要なBtoB決済サービスの比較
| サービス | 特徴 | 手数料目安 | 与信限度額 |
|---|---|---|---|
| Paid(ラクーン) | BtoB掛け売り特化。導入実績が豊富 | 取引額の0.5〜3.5% | 企業ごとに審査 |
| NP掛け払い | NP後払いのBtoB版。請求代行付き | 取引額の1.2〜3.6% | 最大300万円/月 |
| マネーフォワード ケッサイ | 審査スピードが早い。請求書自動発行 | 取引額の0.5〜3.5% | 企業ごとに審査 |
BtoB EC構築プラットフォームの比較
BtoB ECの構築方法は、大きく3つに分かれます。
BtoB専用ASP・SaaS
BtoB ECに特化したクラウドサービスです。掛け売り・会員別価格・承認フローなどの機能が標準装備されています。
| サービス | 特徴 | 費用目安(月額) |
|---|---|---|
| Bカート | BtoB EC専用ASP。機能が豊富で使いやすい | 9,800円〜 |
| 楽楽B2B | 受発注に特化。FAX注文のEC化に強い | 要問合せ |
| アラジンEC | 基幹システム連携に強い。販売管理とセット | 要問合せ |
| ecbeing BtoB | 大規模向け。カスタマイズ性が高い | 要問合せ(初期500万円〜) |
汎用ECプラットフォーム+カスタマイズ
ShopifyやEC-CUBEをベースに、BtoB向けの機能をプラグインやカスタム開発で追加する方法です。
- Shopify Plus — Wholesale Channelで法人向け価格を設定可能。ただし日本の商慣習(掛け売り・請求書払い)には追加開発が必要
- EC-CUBE — BtoB向けプラグインで会員別価格や掛け売りに対応可能。カスタマイズの自由度は高いが、開発コストがかかる
フルスクラッチ開発
自社の業務フローに完全に合わせたシステムをゼロから構築する方法です。
- 向いているケース — 独自の価格体系・商慣習がある、既存の基幹システムとの深い連携が必要、取り扱い商品の特性が特殊(構成品の組み合わせ注文等)
- 費用目安 — 1,000万〜5,000万円以上
- 期間 — 6ヶ月〜1年以上
選び方の判断基準
- 月商1,000万円未満・取引先50社未満 → BtoB専用ASP(Bカート等)で始める
- 月商1,000万〜5,000万円・取引先50〜500社 → 専用ASP or EC-CUBEカスタマイズ
- 月商5,000万円以上・複雑な基幹連携 → フルスクラッチ or 大規模パッケージ
BtoB EC導入の進め方
フェーズ1:現状分析と要件整理(1〜2ヶ月)
- 現在の受発注フロー(電話・FAX・メール)の棚卸し
- 取引先ごとの価格体系・決済条件の整理
- 基幹システムの現状確認(データ連携の可否)
- 社内の関係者(営業・物流・経理)へのヒアリング
フェーズ2:プラットフォーム選定・設計(1〜2ヶ月)
- 機能要件と予算を照らして構築方法を決定
- 決済方法(自社与信 or BtoB決済サービス)の選択
- 基幹システム連携の設計(API・CSV・手動のいずれか)
- 画面設計・ワイヤーフレーム作成
フェーズ3:構築・テスト(2〜6ヶ月)
- ECサイトの構築・カスタマイズ
- 商品データ・取引先データの移行
- 基幹システムとの連携テスト
- 取引先数社でのパイロット運用
フェーズ4:段階的リリース(1〜3ヶ月)
- まず定期注文の多い取引先からECに移行
- 営業担当者への操作研修
- 取引先への利用案内・マニュアル配布
- 電話・FAXとの併用期間を設けて移行を促進
BtoB EC導入でよくある失敗と対策
失敗①:現場の営業担当者が使わない
原因:「今までのやり方の方が早い」と感じてECを使わない
対策:営業担当者にもメリットを実感してもらう(受注処理の時間削減データを見せる、定型注文から移行、新規はEC経由のみにする等)
失敗②:基幹システムとの連携がボトルネックに
原因:古い基幹システムにAPIがなく、データ連携が手作業になる
対策:初期はCSV連携で始め、段階的にAPI連携に移行。ETLツール(Asteria、DataSpider等)の活用も検討
失敗③:取引先ごとの価格設定が複雑すぎる
原因:長年の交渉で取引先ごとに異なる単価が数千パターンある
対策:EC導入を機に価格体系を整理。掛け率テーブルに集約し、例外的な価格は個別対応とする
あわせて読みたい
- ECサイト構築ガイド|費用相場・機能要件・開発会社の選び方【2026年版】
- Shopify vs EC-CUBE vs スクラッチ開発|ECプラットフォーム徹底比較【2026年版】
- ECサイトの決済システム導入ガイド|決済手段の選び方・手数料比較・導入手順
- ECサイトのセキュリティ対策|不正注文防止・個人情報保護・PCI DSS対応ガイド
- 中小企業のERP導入ガイド|基幹システム選定から運用までの全手順
まとめ
- BtoB ECはBtoCとは別物。会員別価格・掛け売り・承認フロー・基幹連携など、法人取引特有の機能が必須
- 掛け売りの与信管理が最大のハードル。BtoB決済サービス(Paid、NP掛け払い等)を活用すれば、与信から回収まで代行可能
- まずはBtoB専用ASPで始めるのが安全。Bカート等なら月額1万円未満からスタートできる
- 基幹システム連携は段階的に。最初からフル連携を目指すとプロジェクトが長期化する
- 現場の巻き込みが成功の鍵。営業・物流・経理の関係者を初期段階から参加させる
- 一気にではなく段階的に移行。定期注文→新規注文→全取引の順でEC化を進める
BtoB ECサイトの構築や基幹システムとの連携でお困りの方は、お問い合わせからご相談ください。FUNBREWでは、業務フローの分析からEC構築・基幹連携まで一貫してサポートしています。
この記事をシェア