この記事でわかること
- ターゲット業界の選び方(IT化度・競合・市場規模の3軸)
- 現場ヒアリングで本質的なペインを発掘する方法
- TAM/SAM/SOMを使った市場規模の推定手順
- 競合分析のフレームワークと差別化の見つけ方
- プロトタイプ・LP・事前登録によるニーズ検証
市場調査なしで作ると「誰も使わないSaaS」になる
バーティカルSaaSの最大のリスクは「作ってから売れないと気づく」ことです。汎用SaaSと違い、ターゲットが特定業界に絞られているため、そこにニーズがなければ市場そのものが存在しません。
FUNBREWが造園業向けSaaS「niwakura」を開発した際、最初に徹底したのが市場調査でした。実際に造園業者の現場へ足を運び、現場の課題を肌で感じてから開発をスタートしています。この記事では、その経験をもとにバーティカルSaaSの市場調査を体系的に解説します。
詳しい開発全体の流れは業界特化SaaS開発の完全ガイドもあわせてご覧ください。
ターゲット業界の選び方
「どの業界を狙うか」は、バーティカルSaaSの成否を左右する最初の意思決定です。以下の3つの軸で業界を評価しましょう。
1. 業界のIT化度(低いほどチャンス)
すでにDX化が進んでいる業界は、強力な既存プレイヤーが存在します。逆に、IT化が遅れている業界はアナログ業務が残っており、参入余地があります。
造園業界はその典型例でした。見積もりは手書き、発注はFAX、工程管理はExcelか紙台帳という会社が今でも多く存在します。IT化率の低さが「差し込む隙間」を生み出していました。
2. 競合の有無(既存SaaSの質と量)
競合がゼロの市場は、ニーズがないサインである可能性もあります。ただし、既存ソリューションが「業界の実務に合っていない汎用ツール」しかない場合は参入チャンスです。競合調査では、AppStore・Google Play・Google検索・資金調達ニュースをあわせて確認します。
3. 市場規模(小さすぎない規模感)
ニッチすぎる業界は初期ユーザーを獲得できても、スケールに限界があります。国内の事業者数・従業員数・業界売上高を経済センサスや業界団体の資料で調べ、課金可能なユーザー数の上限を事前に把握しておきましょう。
ペインの見つけ方
業界を選んだ後は、「実際にどんな課題があるか」を明らかにするフェーズです。頭の中で仮説を作るだけでなく、必ず現場に出て一次情報を取りにいくことが重要です。
現場ヒアリングの進め方
最低でも10〜20人の現場担当者にインタビューすることを目標にしましょう。ポイントは「何が不便ですか?」と直接聞かないことです。「1日の業務の流れを教えてください」と聞くと、本人が課題と気づいていない非効率が自然と出てきます。
niwakura開発時は、造園会社の社長・現場職人・事務担当それぞれにヒアリングを行いました。見積作成に多くの時間がかかっている、工事写真の管理が属人化している、請求書を手書きで作成してミスが頻発するなど、ペインが次々と浮かびあがりました。
既存ソリューションの限界を調べる
現場が現在どのツールを使っているかを把握し、そのツールのレビューを確認します。G2・Capterra・Google Playのレビューには「ここが使いにくい」「この機能が欲しかった」というリアルな声が集まっています。既存ソリューションの不満点がそのまま開発するべき機能になります。
市場規模の推定方法(TAM/SAM/SOM)
投資家への説明や事業計画の作成だけでなく、自分たちが狙える規模感を把握するためにもTAM/SAM/SOMの推定は必須です。
TAM(Total Addressable Market)
その業界全体が対象になった場合の最大市場規模。たとえば、国内造園会社の総数×平均的なSaaS利用料で算出します。
SAM(Serviceable Addressable Market)
自社のプロダクトが実際に届けられるセグメント。造園業でいえば「従業員5人以上・年商1億円以上の会社」のみを対象にするなど、現実的に課金できるセグメントに絞ります。
SOM(Serviceable Obtainable Market)
5年以内に現実的に取れるシェア。市場参入初期はSAMの5〜10%を目標にすることが多いです。SOMが小さすぎる(例:年間売上1,000万円以下)場合は、事業化のROIが合わない可能性を検討する必要があります。
競合分析のフレームワーク
競合は「直接競合」と「間接競合」に分けて整理します。
| 区分 | 定義 | 調査方法 |
|---|---|---|
| 直接競合 | 同じ業界向けに同じ課題を解くSaaS | Google検索、業界団体サイト、展示会 |
| 間接競合 | 汎用ツールや手作業での代替手段 | ヒアリング、現場観察 |
競合ごとに「機能」「価格」「UIの使いやすさ」「サポート体制」「業界特化度」を5段階で評価し、ポジショニングマップを描くと差別化ポイントが見えやすくなります。
ニーズ検証の手法
調査でペインを把握したら、実際に作る前にニーズを検証します。作りすぎて的外れになるリスクを最小化するのがこのフェーズの目的です。
プロトタイプ検証
Figmaや紙プロトタイプで画面の流れを作り、ターゲットユーザーに操作してもらいます。「どこで迷うか」「どの機能に反応するか」を観察するだけで、開発前に多くの気づきが得られます。
ランディングページ検証
プロダクトが完成する前にLPだけを公開し、メールアドレスの登録者数や問い合わせ数でニーズを測ります。広告費数万円で、数百人のターゲットユーザーにリーチできます。
事前登録・先行受注
「開発中のSaaSを先行割引で利用できる権利」を販売し、実際にお金を払う意思があるかを確認します。無料登録より一段階強い検証です。niwakura開発時は、ヒアリング結果をもとに本格開発に入りました。
まとめ
バーティカルSaaSを成功させる市場調査のステップをまとめます。
- IT化が遅れていて、競合が少なく、市場規模が十分な業界を選ぶ
- 現場ヒアリングと既存ソリューションのレビュー調査でペインを特定する
- TAM/SAM/SOMで事業として成立するか検証する
- 直接競合・間接競合を整理し差別化軸を定める
- プロトタイプ・LP・事前登録でニーズを確認してから本格開発に入る
市場調査は「作る前の手間」ではなく、「失敗のコストを最小化する投資」です。FUNBREWでは業界特化SaaSの企画段階からご支援しています。市場調査のやり方に迷っている方は、ぜひご相談ください。
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