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開発

受託開発会社が自社SaaSを持つメリットと始め方

2026年4月3日 約7分で読めます
  • 受託開発はフロー型、自社SaaSはストック型——この違いが経営安定性に大きく影響する
  • 自社SaaSを持つことで得られる3つのメリット:ストック収益・技術力の証明・採用力向上
  • よくある失敗はリソース不足・汎用化コスト・過剰な作り込み——事前に対策を立てることが重要
  • 受託案件から複数クライアント共通のペインを見つけ、MVPで素早く検証するのが成功の近道
  • FUNBREWが3つのプロダクトを運営しながら学んだ、受託と自社開発を両立するリソース配分の原則

受託開発と自社SaaSは何が違うのか

受託開発は「クライアントの課題をコードで解決する仕事」です。プロジェクトが完了すれば報酬が入り、次の案件を取りにいく——というサイクルを繰り返します。売上は常にフロー型で、手が止まれば収益も止まります。

一方、自社SaaSは「自分たちが発見した課題をプロダクトで解決する事業」です。開発に投資した分が資産として積み上がり、ユーザーが増えるほど収益が伸びるストック型のモデルです。

この2つはビジネスモデルだけでなく、思考様式も大きく異なります。受託開発では「クライアントに言われたものを正確に作る」ことが評価されますが、自社SaaSでは「誰も言わなかった課題を見つけて解決する」ことが求められます。

項目 受託開発 自社SaaS
収益モデル フロー型(プロジェクト単位) ストック型(サブスクリプション)
顧客の主導権 クライアント 自社
スケーラビリティ 人手に比例 ユーザー数に比例
リスク 受注停止・単価競争 市場ニーズ不一致・開発コスト

自社SaaSを持つことで生まれる3つのメリット

1. ストック収益がフロー収益のリスクを補完する

受託開発の最大のリスクは「案件が途切れると収益がゼロになる」ことです。景気の変動、主要クライアントの予算削減、発注者の担当者交代——どれか一つが起きるだけで、月次の売上が大幅に落ち込む可能性があります。

自社SaaSのサブスクリプション収益があれば、受託案件が薄い月でも固定費をカバーできます。「この月は受託が少ないが、SaaSで◯万円が入ってくる」という安心感は、経営判断に余裕をもたらします。採算の合わない案件を断りやすくなるのも副次的なメリットです。

2. 技術力の「証明」として機能する

受託開発会社がクライアントに技術力をアピールするとき、最も説得力があるのは「自分たちが作って運用しているプロダクト」を見せることです。ポートフォリオに過去の実績を並べるより、「今まさに使われているプロダクト」を触ってもらうほうが、技術力と運用能力の両方を同時に証明できます。

FUNBREWでも、自社プロダクト群をクライアントとの商談時に紹介しています。「このレベルのものを自社でゼロから作っているなら安心できる」という反応をいただくことが少なくありません。

3. エンジニア採用と組織文化の強化

「自社プロダクトを作っている会社」は、エンジニアにとって魅力的な職場です。受託専業の会社より、技術的な挑戦が多く、プロダクト全体を見渡せる経験ができると感じてもらいやすいです。

さらに、自社SaaSの開発・運用を通じて、エンジニアは「ユーザーに価値を届ける」という感覚を養えます。この視点は受託開発にも好影響を与え、チーム全体の提案力が上がる効果もあります。

よくある失敗パターン3つ

パターン1:受託と自社開発のリソースが両立しない

最も多い失敗は「受託が忙しくなると自社開発が止まる」です。月次の売上プレッシャーがある受託開発は、どうしても優先度が高くなります。自社SaaSは緊急度が低いため、後回しにされ続け、気づけば1年間ほぼ進捗がない——というケースは珍しくありません。

対策は「自社開発の時間を受託と同じように予算化する」ことです。週に何時間、または何人のエンジニアを固定で自社開発に充てるかを決め、その時間は受託案件で使わないというルールを作る必要があります。

パターン2:受託で作ったシステムをそのままSaaSにしようとする

「クライアント向けに作ったシステムを、他社にも販売しよう」という発想は一見合理的に見えます。しかし、特定クライアントの要件に最適化されたシステムは、汎用化に多大なコストがかかることがほとんどです。

特定業務のカスタム機能、クライアント固有のデータ構造、保守契約に縛られたアーキテクチャ——これらをマルチテナント対応のSaaSに作り直すのは、ゼロから作るのと変わらないことも多いです。

パターン3:市場検証より先に作りすぎる

エンジニアチームが自社プロダクトを作ると、どうしても「完成度を高めてからリリースしたい」という衝動が働きます。6ヶ月開発して、リリースしてみたら誰も使わなかった——というのが最悪のシナリオです。

自社SaaSで成功する確率を上げるには、最初にターゲットユーザーのペインを徹底的に理解し、最小限の機能でリリースして検証することが不可欠です。

始め方:受託の知見をSaaS化する4ステップ

Step 1:受託案件でペインを発見する

受託開発会社が自社SaaSを始める際の最大のアドバンテージは、「複数クライアントの業務課題に深く入り込める」ことです。同じ課題を3社以上のクライアントが持っていれば、それは市場ニーズのある課題です。

日々の受託案件の中で「この作業、毎回どこでも発生するな」「このツール、クライアントが全員使いにくいと言っている」という観察を意識的に記録していくことが出発点です。

Step 2:課題の深さとマーケットサイズを仮検証する

ペインを見つけたら、そのペインが「十分に痛い」かどうかを確認します。ユーザーが現在どう解決しているか(手作業、別ツールの組み合わせ、我慢)を調べ、解決するためにお金を払うかどうかを直接聞いてみます。

この段階ではプロダクトを作らず、インタビューやランディングページへの反応でニーズを測定します。

Step 3:MVPを3ヶ月以内にリリースする

検証できたら、必要最小限の機能に絞って開発します。期限は3ヶ月を目安にするのが現実的です。受託と並行する場合、開発リソースに限りがあるため、機能を削ることよりリリースを優先することを意識します。

詳細な開発プロセスについては業界特化SaaS開発の完全ガイドも参照してください。

Step 4:フィードバックループを回す

MVPリリース後は、ユーザーの行動データとフィードバックを基に改善を続けます。受託開発と異なり、自社SaaSは「リリースが終わり」ではなく「リリースが始まり」です。ここからが本当のプロダクト開発です。

FUNBREWの事例:3つの自社プロダクトを運営して学んだこと

FUNBREWは現在、受託開発と並行して3つの自社プロダクトを運営しています。

  • Simple Contract:フリーランス・中小企業向けの契約書作成・電子署名サービス
  • FUNBREW PDF:高品質なPDF生成API(Chromium + wkhtmltopdfのデュアルエンジン)
  • niwakura:造園業向けの見積・請求書作成SaaS

これらを運営する中で、いくつかの重要な学びがありました。

受託の技術が自社プロダクトの品質を上げ、自社プロダクトの失敗が受託の提案力を上げる。 受託でEC構築を繰り返すと決済フローの設計知識が深まり、その知識がSimple Contractのサブスクリプション設計に活きました。逆に、FUNBREW PDFの開発で直面したPDF生成エンジンの選定問題は、受託案件でPDFが絡む提案をする際の説得力になっています。

プロダクトの数より、各プロダクトへのコミットが大事。 最初は「とにかく複数展開して当たりを探す」という戦略でしたが、各プロダクトへの注力が薄くなりがちでした。今は各プロダクトに担当者を固定し、週次でメトリクスを確認する体制にしています。

受託と自社開発を両立するリソース配分のコツ

FUNBREWが現在実践しているリソース配分の原則は、以下の3つです。

原則1:自社開発時間を「予算」として確保する

一定の開発リソースを自社開発に確保することを「先に決める」ことを徹底しています。受託案件が入ってきても、この枠は守ります。受託の売上が一時的に下がっても、長期的には自社SaaSへの投資が回収されるという経営判断です。

原則2:自社SaaSの開発は「受託と同じ真剣さ」で管理する

スプリント計画、バックログ整理、デプロイのリリースノート——受託で当たり前にやっていることを自社プロダクトでもやります。「自社だから適当でいい」という文化が最も危険です。

原則3:受託の顧客をプロダクトの最初のユーザーにする

既存の受託クライアントは、新しいプロダクトのアーリーアダプターになってもらいやすい相手です。FUNBREWでも、受託取引があるクライアントに最初にSaaSを紹介し、フィードバックをもらいながら改善するサイクルを作っています。

受託開発会社が自社SaaSを始める最大の武器は「すでにペインを持つユーザーと接点がある」こと。市場調査より先に、今のクライアントの声を聞くことから始めましょう。

まとめ

受託開発会社が自社SaaSを持つことは、リスク分散と技術的な信頼性の向上、そして採用力の強化という複数のメリットをもたらします。ただし、リソース配分の失敗や中途半端なプロダクトにならないよう、仕組みとコミットメントが不可欠です。

成功の鍵は「受託案件からペインを見つけ、MVPで素早く検証する」という繰り返しにあります。FUNBREWが3つの自社プロダクトを運営しながら受託開発も続けられているのは、この原則を守り続けているからです。

自社SaaSの立ち上げを検討している受託開発会社の方は、ぜひFUNBREWにご相談ください。プロダクト設計から技術選定まで、実体験に基づいたアドバイスをお伝えできます。

よくある質問
受託開発会社が自社SaaSを始めるのに向いているタイミングはいつですか?
受託売上が安定しており、月次の固定費をカバーできる状態になってから始めるのが理想です。また、複数のクライアントで同じ課題を発見したタイミングは、市場ニーズの検証が取りやすく参入のサインになります。逆に、受託が不安定な時期に自社開発リソースを割くと、どちらも中途半端になるリスクがあります。
受託開発のリソースを自社SaaSにどのくらい充てるべきですか?
一定の開発リソースを自社開発に確保することをお勧めします。重要なのは比率より「先に枠を確保する」こと。受託の繁忙期でも自社開発時間を守る意思決定が、継続の鍵です。
受託開発の知見をSaaSに転用する際の注意点は何ですか?
特定クライアント向けに最適化されたシステムをそのままSaaS化しようとすると、汎用化に大きなコストがかかります。「同じ課題を複数クライアントが持っている」ことを確認した上で、クライアント固有の要件を除いた汎用部分をゼロベースで設計し直すアプローチが現実的です。
自社SaaSを始めてから収益が出るまでどのくらいかかりますか?
一般的には最初の有料ユーザーが出るまで3〜6ヶ月、月次で固定費をカバーできるMRRに達するまで1〜2年を目安にすることが多いです。受託収益で生活費と開発費を賄いながら自社SaaSを育てるモデルが、受託開発会社にとって最もリスクが低いアプローチです。
FUNBREWはどのような自社プロダクトを運営していますか?
FUNBREWは「Simple Contract(契約書作成・電子署名)」「FUNBREW PDF(高品質PDF生成API)」「niwakura(造園業向けの見積・請求書作成SaaS)」の3つのプロダクトを運営しています。いずれも受託開発の中で発見した課題から生まれたプロダクトです。詳細はプロダクトページをご確認ください。

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