- 統合型ERPと個別SaaS連携(ベストオブブリード)の違い
- それぞれのメリット・デメリット
- 自社に合った方式の判断基準
- SaaS連携を実現するiPaaS・API連携ツールの選び方
- ハイブリッド型(ERP+SaaS)の現実的な構成例
2つのアプローチ — 統合型か、組み合わせ型か
企業のバックオフィス業務をシステム化する方法は、大きく2つに分かれます。
統合型ERP:会計・販売・在庫・人事をひとつのERPパッケージで統合管理する方式。SAP、Oracle、freee、マネーフォワードなどが代表的です。
ベストオブブリード(SaaS組み合わせ):各業務領域で最も優れた個別SaaSを選び、API連携で繋ぐ方式。会計はfreee、勤怠はジョブカン、請求はMakeLeaps、CRMはHubSpot——といった組み合わせです。
どちらが正解というわけではなく、企業の規模・業種・IT成熟度によって最適解が異なります。
統合型ERPのメリット・デメリット
メリット
- データの一元管理 — 受注→出荷→請求→入金→会計が一気通貫。データの整合性が高い
- リアルタイムの経営可視化 — 全業務のデータが統合されているため、経営ダッシュボードが作りやすい
- 二重入力の排除 — システム間のデータ連携が不要。入力ミスと作業時間を削減
- 監査対応の容易さ — データの流れが一本化されているため、内部統制・監査対応がシンプル
デメリット
- 各機能が「そこそこ」 — 統合型は全体最適だが、個別機能では専門SaaSに劣る場合がある
- 導入コストと期間が大きい — 全業務を一度に導入するため、中小企業でも数百万〜数千万円
- 柔軟性の低さ — 一部の機能だけ入れ替えることが難しい。ベンダーロックイン
- オーバースペック — 必要ない機能まで含まれ、ライセンス費用が無駄になることも
ベストオブブリード(SaaS組み合わせ)のメリット・デメリット
メリット
- 各領域で最高のツールを使える — 会計はfreee、CRMはSalesforce、など各分野の専門ツールを選択
- 段階的に導入できる — まず会計から、次にCRM、次に在庫管理——と順番に導入可能
- 柔軟な入れ替え — 合わないツールだけを別のSaaSに切り替えられる
- 初期コストが低い — 各SaaSの月額費用のみ。初期投資を抑えられる
デメリット
- データ連携の複雑さ — 各SaaS間のデータ連携を自前で構築・維持する必要がある
- データの不整合リスク — 連携の遅延やエラーで、システム間のデータにズレが生じる
- 運用管理の煩雑さ — 5個、10個のSaaSを個別に管理。アカウント管理、契約更新、障害対応が分散
- トータルコストの見えにくさ — 各SaaSの月額費用+連携ツール費用+保守工数を合計すると、ERPより高くなることも
判断基準 — 自社にはどちらが合うか
| 判断軸 | 統合型ERPが向いている | SaaS組み合わせが向いている |
|---|---|---|
| 社員数 | 50人以上 | 50人未満 |
| 業務の複雑さ | 製造・物流など複雑な業務フロー | サービス業・IT企業など比較的シンプル |
| 予算 | 初期投資に500万円以上出せる | 月額費用で始めたい |
| IT体制 | 情報システム部門がある | IT専任者がいない |
| データ統合の重要性 | リアルタイムの一元管理が必須 | 日次・週次のデータ連携で十分 |
| 成長フェーズ | 安定期。業務フローが確立している | 成長期。業務フローが頻繁に変わる |
SaaS連携を実現するツール
ベストオブブリード方式を選ぶ場合、SaaS間のデータ連携が重要です。
iPaaS(Integration Platform as a Service)
ノーコード・ローコードでSaaS間の連携を実現するクラウドサービスです。
| ツール | 特徴 | 費用目安(月額) |
|---|---|---|
| Zapier | 5,000以上のアプリ連携。直感的なUI | 無料〜$69〜 |
| Make(旧Integromat) | 複雑なワークフローに対応。コスパが良い | 無料〜$9〜 |
| Workato | エンタープライズ向け。日本語サポート | 要問合せ(年額100万円〜) |
| Anyflow | 日本製iPaaS。国産SaaSとの連携が豊富 | 要問合せ |
API連携(カスタム開発)
iPaaSでは対応できない複雑な連携や、リアルタイム性が求められる場合は、APIを使ったカスタム連携を開発します。
- メリット — 要件に完全に合った連携が可能
- デメリット — 開発・保守コストがかかる。SaaS側のAPI仕様変更への追従が必要
- 費用目安 — 1連携あたり50〜200万円程度(複雑さによる)
ハイブリッド型の構成例
実務的には、ERPとSaaSを組み合わせた「ハイブリッド型」が増えています。
構成例:中小企業(社員30名、卸売業)
- ERP — freee会計 + freee人事労務(コア業務)
- CRM — HubSpot(営業管理・マーケティング)
- 在庫管理 — ロジクラ(倉庫・在庫管理)
- EC — Shopify(オンライン販売)
- 連携 — Zapierでfreee ↔ HubSpot ↔ Shopifyを連携
この構成なら月額10〜15万円程度で全業務をカバーでき、統合型ERPの数百万円の初期投資を回避できます。
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まとめ
- 統合型ERPはデータ一元管理と業務の一気通貫が強み。50人以上・複雑な業務フローに向く
- SaaS組み合わせは柔軟性と低初期コストが強み。50人未満・成長期の企業に向く
- 判断基準は「データ統合の重要性」と「業務の複雑さ」
- SaaS連携にはiPaaS(Zapier、Make等)を活用。ノーコードで連携を構築
- ハイブリッド型が現実的な解。コア業務はERP、周辺業務は専門SaaSの組み合わせ
- 3年後を見据えて判断。成長に伴い、SaaS→ERPへの移行も選択肢
基幹システムの構成でお悩みの方は、お問い合わせからご相談ください。FUNBREWでは、お客様の規模と業務に合った最適なシステム構成をご提案しています。
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