記事一覧に戻る
AI・DX

クラウド移行ガイド|オンプレミスからクラウドへの移行手順と費用【2026年版】

2026年3月8日 約8分で読めます
この記事でわかること
  • クラウド移行の5つの戦略(5R)と選び方
  • 移行の進め方(アセスメント→PoC→本番移行→最適化)
  • オンプレミス vs クラウドの5年間TCO比較
  • 移行時のリスクと失敗パターンへの対策
  • クラウドベンダー(AWS・Azure・GCP)の選び方
  • クラウド移行の費用と期間の目安

クラウド移行とは

クラウド移行とは、自社のサーバールームやデータセンター(オンプレミス)で稼働しているシステムを、AWS・Azure・GCP等のクラウドサービスに移行することです。

総務省の調査によると、クラウドサービスを利用している企業は年々増加しており、「一部でも利用している」企業は7割を超えています。サーバー老朽化や保守人材の不足をきっかけに移行を検討する企業が多く、5年ごとのサーバー更新タイミングが最も多い移行時期です。

クラウド移行で得られる5つのメリット

1. コスト構造の変革: 数千万円のサーバー購入(CAPEX)から、月額課金(OPEX)へ。初期投資を大幅に抑え、資金を事業成長に回せます。

2. スケーラビリティ: 繁忙期はサーバーを増やし、閑散期は減らす。物理サーバーでは数週間かかるリソース追加が、クラウドなら数分で完了します。

3. 災害対策(BCP): データを複数リージョンに分散保存。自社サーバー室が被災しても、クラウド上のシステムは稼働し続けます。

4. 運用負荷の軽減: OS・ミドルウェアのパッチ適用、バックアップ、監視などをクラウドベンダーが担当。社内のIT人材をより戦略的な業務に集中させられます。

5. セキュリティの強化: AWS・Azure・GCPは、自社で構築するよりも高水準のセキュリティ基盤を提供。SOC2、ISO27001、PCI DSSなどの認証を取得済みです。

オンプレミス vs クラウドのコスト比較

比較項目 オンプレミス クラウド
初期費用 500〜3,000万円 0〜50万円
月額費用 保守費10〜50万円 利用量に応じた課金
サーバー更新 5年ごとに全額投資 不要(自動更新)
スケーリング ハードウェア購入が必要 数分で増減可能
災害対策 自社で構築(高コスト) 標準搭載(マルチリージョン)
運用人員 専任1〜3名必要 大幅に削減可能

5年間のTCO(総所有コスト)比較例

中規模システム(サーバー5台相当)の場合:

項目 オンプレミス クラウド
初期投資 1,500万円 50万円(移行費)
年間運用費 300万円 200万円
5年後の更新 1,000万円 0円
5年間合計 4,000万円 1,050万円

5年間で約3,000万円のコスト差が生まれます。ただし「クラウドは常に安い」とは限りません。24時間フル稼働のシステムや、大量のデータ転送が発生するケースでは、クラウドのほうが高くなることもあります。正確な比較にはTCO試算が必須です。

クラウド移行の5つの戦略(5R)

クラウド移行には5つのアプローチがあり、システムの特性に応じて使い分けます。すべてのシステムを同じ方法で移行する必要はなく、システムごとに最適な戦略を選択してください。

戦略 内容 費用 リスク 向いているケース
Rehost(リフト&シフト) そのままクラウドに移行 早く移行したい
Replatform 一部をクラウド最適化 低〜中 効率化したい
Refactor クラウドネイティブに再構築 中〜高 最大限の効果を得たい
Retire 不要なシステムを廃止 0 使われていないシステム
Retain 移行しない(オンプレ維持) 0 移行できないシステム

中小企業の推奨アプローチ

まずRehost(リフト&シフト)で移行し、その後段階的にReplatformする。 Refactorは効果は大きいがコスト・リスクも高いため、最初からは推奨しません。

実際の移行プロジェクトでは、5〜20あるシステムのうち「60%はRehost、20%はReplatform、10%はRetire、10%はRetain」というパターンが一般的です。まずは全システムを棚卸しし、それぞれの戦略を決めるところから始めてください。

💬
クラウド移行で最も重要なのは「全部を一度に移行しない」ことです。まず影響の小さいシステム(社内ツール、テスト環境等)を移行し、クラウド運用のノウハウを蓄積。その後に基幹システムを移行する「段階的アプローチ」が最もリスクが低いです。

クラウドベンダーの選び方

AWS・Azure・GCPの三大クラウドベンダーは、基本機能に大きな差はありません。選定のポイントは以下の通りです。

選定基準 AWS Azure GCP
国内シェア 1位(約40%) 2位(約25%) 3位(約15%)
強み サービス数最多、情報量豊富 Microsoft製品との連携 AI/ML、データ分析
日本語サポート
中小企業向け パートナー企業が多い Microsoft 365利用企業に最適 データ活用に注力する企業に

選び方の目安:

  • 迷ったらAWS: 情報量・パートナー数ともに最多。エンジニア採用もしやすい
  • Microsoft 365やActive Directoryを使っているならAzure: 既存のMicrosoft環境とシームレスに統合
  • AI・機械学習やデータ分析に注力するならGCP: BigQueryやVertex AIなど、データ系サービスが強い

移行の進め方

Phase 1: アセスメント(2〜4週間)

移行の成否はアセスメントの精度で8割が決まります。

  • 現在の全システムの棚卸し(サーバー台数、OS、ミドルウェア、データ量)
  • システム間の依存関係の整理(このシステムが止まると、どこに影響するか)
  • システムごとの移行優先度を決定(影響度 × 移行難易度のマトリクスで判断)
  • クラウド利用料の見積もり(AWS Pricing Calculator等で試算)
  • 移行計画の策定(スケジュール、体制、リスク対策)

Phase 2: PoC(1〜2ヶ月)

小規模なシステムで「お試し移行」を実施し、技術的な課題を洗い出します。

  • 優先度の低いシステム(社内ツール、テスト環境)で試験移行
  • パフォーマンステスト(レスポンスタイム、スループットがオンプレミスと同等以上か)
  • セキュリティテスト(IAM設定、暗号化、ネットワーク分離)
  • 運用手順の確認(監視、バックアップ、障害対応)
  • クラウド運用に必要なスキルの把握と教育計画の策定

Phase 3: 本番移行(2〜6ヶ月)

PoCで得たノウハウをもとに、本番システムを段階的に移行します。

  • データ移行(データ量による:GB単位なら数時間、TB単位なら数日〜数週間)
  • アプリケーションの移行・動作確認
  • DNS切り替え(ダウンタイム最小化のため、深夜・休日に実施)
  • 並行稼働期間(1〜2週間、問題があれば切り戻し)
  • 切り戻し手順の事前準備(移行失敗時にオンプレミスに戻す計画)

Phase 4: 最適化(継続)

移行完了後のコスト最適化が、クラウドの真価を発揮するフェーズです。

  • コスト最適化(リザーブドインスタンス、不要リソースの削除、スポットインスタンスの活用)
  • パフォーマンスチューニング(レスポンス改善、キャッシュ戦略)
  • 監視・アラートの設定(CloudWatch、Azure Monitor等)
  • クラウドネイティブ機能の段階的導入(コンテナ、サーバーレス等)
  • 月次コストレビュー(予算超過の早期発見)

移行時のリスクと対策

リスク 影響度 対策
ダウンタイム 並行稼働期間の設定、切り戻し計画の準備
データロス 移行前後のデータ整合性チェック、バックアップの取得
パフォーマンス低下 PoC段階での負荷テスト、サイジングの適正化
セキュリティ 責任共有モデルの理解、IAM/暗号化の設定
コスト超過 予算アラートの設定、コスト最適化レビュー(月次)
ベンダーロックイン マルチクラウド対応の設計、コンテナ(Docker/K8s)の活用

よくある失敗パターンと回避策

失敗1: オンプレミスと同じ構成をクラウドに再現してしまう

オンプレミスで使っていた高スペックサーバーをそのままクラウドで契約すると、使っていない時間帯も課金され、コストが増大します。クラウドは「必要な時に必要なだけ使う」設計が基本。オートスケーリングを活用し、負荷に応じてリソースを自動調整してください。

失敗2: 移行後の運用体制を考えていなかった

クラウド移行しても、運用スキルがなければ障害対応やコスト管理ができません。移行前にクラウド運用の研修を実施するか、マネージドサービスの活用を検討してください。

失敗3: 全システムを一度に移行しようとした

「一気にやったほうが効率的」と考えて全システムを同時に移行し、トラブルが多発するケースがあります。影響の小さいシステムから段階的に移行し、各フェーズで学んだことを次に活かす「スモールスタート」が鉄則です。

費用の目安

移行規模 サーバー台数 移行費用 期間
小規模 1〜5台 50〜200万円 1〜3ヶ月
中規模 5〜20台 200〜800万円 3〜6ヶ月
大規模 20台以上 800〜3,000万円 6〜12ヶ月

費用に含まれるもの:

  • 現状調査・アセスメント費用
  • 移行設計・テスト費用
  • データ移行・アプリケーション移行の作業費
  • 並行稼働期間中のクラウド利用料

費用に含まれないもの(別途必要):

  • 移行後のクラウド月額利用料
  • クラウド運用の研修・教育費
  • アプリケーションの改修費(Replatform・Refactorの場合)
💬
クラウド移行後に「オンプレミスより高くなった」という声を聞くことがあります。原因の多くは「リソースの過剰プロビジョニング」です。オンプレミスの時と同じスペックのサーバーをクラウドで立てると、使っていない時間も課金されるため高くなります。オートスケーリングとリザーブドインスタンスを活用し、必要な時だけ必要なリソースを使う設計にしてください。

あわせて読みたい

このテーマの関連記事

「クラウドインフラ」をさらに深掘りする記事をまとめました。

まとめ

クラウド移行は、サーバーの老朽化対策やコスト削減だけでなく、事業のスケーラビリティと災害耐性を根本的に変える経営判断です。

5年間のTCOではオンプレミスの50〜70%のコスト削減が見込め、初期投資も大幅に抑えられます。移行戦略は「まずRehostで素早く移行し、段階的にReplatformで最適化」が中小企業の王道パターンです。

成功のポイントは3つ。①全システムを棚卸しして移行戦略を決める、②影響の小さいシステムからスモールスタートする、③移行後のコスト最適化を継続する。「完璧な計画」より「小さく始めて学ぶ」アプローチが、結果的に最も安全で確実です。

FUNBREWではクラウド移行のアセスメントから設計・移行・運用支援まで対応しています。「うちのシステムはクラウドに移行すべきか?」という段階からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

クラウド移行のご相談

お気軽にご相談ください。無料でアドバイスいたします。

この記事をシェア

クラウド移行のことならFUNBREWへ

要件整理から開発まで一貫して対応します。

最新情報をお届けします

IT活用のヒントやお役立ち情報を定期的にお届けします。

相談のハードル、下げました

まずは気軽にご相談ください

「まだ具体的に決まっていない」「とりあえず話を聞きたい」でも大丈夫。プロトタイプを見ながら、一緒にアイデアを形にしていきましょう。

相談無料 オンライン対応 1週間でプロトタイプ